ウクライナが核攻撃されれば米国はどう報復するか 通常兵器で直接攻撃も、ロシアの演習で高まる緊張
シコルスキ外相の発言は、ロシアの核使用に対するNATOの対抗策に関して重要な意味合いを含んでいる。 ロシアのウクライナでの核使用に対して、NATOの選択肢は①同様の手段、つまり核兵器で報復する②核兵器を使わないものの、ロシア軍を通常兵器で直接攻撃し、戦闘状態に入る③ロシアとの直接の戦闘を避け、ウクライナ軍への支援を強化する―などのシナリオが想定されていたが、同外相の発言が事実とすれば、米国がロシアへの通常兵器による攻撃方針に傾いていることを意味している。 米CNNテレビなどによると、米政府は2022年後半、ウクライナ東部ハリコフや南部ヘルソンを奪還されるなど劣勢になったロシア軍が、ウクライナで低出力の戦術核兵器を使用することに警戒を強めていた。 バイデン米大統領は同年9月、米CBSテレビの報道番組「60ミニッツ」に出演し、ロシアの核使用に対する対応を尋ねられ「ロシアはますます国際社会ののけ者になるだろう。彼らがどの程度のことをやるかに応じて、われわれの対応も決まってくる」と明言を避けた。
一方、イラクやアフガニスタンでの多国籍軍司令官や米中央情報局(CIA)長官などを務めたデービッド・ペトレアス米退役陸軍大将は同年10月、米ABCテレビに対し「仮定の話だが、ウクライナやクリミア半島、黒海に展開するすべてのロシア軍部隊を排除するNATOの作戦を率いることになるだろう」と、ロシアとの通常兵器による戦闘の可能性を示唆した。 同氏によると、ウクライナはNATO加盟国ではないため、北大西洋条約第5条に基づく集団的自衛権の対象とはならないものの、核爆発による放射性物質降下が加盟国への攻撃と解することも可能である上に、「(核攻撃が)あまりに恐ろしいことであるがために、米国が対応しないことはあり得ない」という。 ▽核で報復せず 米政権内にはもともと、ロシアの核攻撃に対して即座に核で報復せず、通常兵器で対応すべきとの意見が根強かった。 オバマ政権時の2016年、米国の国家安全保障に関する最高意思決定機関の一つで、大統領への諮問機関である国家安全保障会議(NSC)はロシアの核使用に対する机上演習を実施した。