【全日本大学駅伝】東洋大は出雲駅伝11位からの"鉄紺の逆襲"を成し遂げられるか!?
【4年生トリオに3年生の奮起が上位へのカギ】 9月中旬、酒井監督は全日本大学駅伝の戦い方を、こうシミュレーションしていた。 「全日本は昨年、勝負に全く絡めず、シード権(8位以内)も逃しました。来年度のスケジュールを考えると最低限、シード権は獲らないといけませんし、箱根で勝負するためにも上を目指していきたい」 "上"を目指すうえでキーマンとなるのが5000mの元高校記録保持者・石田だろう。「彼の復活の走りが東洋の象徴のようなカタチになっています」と酒井監督も感じており、石田に"エース"の走りを期待している。 全日本は1年時に4区で区間賞。2年時は2区で区間9位も、14位から9位に順位を上げている。3年時は試練の一年を過ごしたが、今季はトラックシーズンで大活躍。関東インカレの1部10000mで28分08秒29の自己ベストで6位に食い込むと、全日本の関東選考会は3組でトップを奪った。結果だけでなく、石田の気迫あふれる走りがチームの士気を高めている。 「全日本はスピード区間とロング区間のバランスが非常に難しいんですけど、出雲で経験を積んだ選手と、集大成となる選手の両方を起用するつもりです。序盤のスピード区間で耐えて、中盤4~6区で上げていければ、7区、8区の走りも変わってくるかなと思っています」(酒井監督) 猪苗代合宿では、「まずは自分の状態を万全にして、全日本からチームに貢献できるようにしたいと思っています」と話していた石田の区間で流れをつかむことができれば、鉄紺のタスキが誇らしく揺れるだろう。 前回2区で区間16位と苦戦した小林も関東インカレ1部10000mで7位(28分12秒77)に入るなど、今季は10000mでハイアベレージを残している。全日本に向けては、「昨年、順位を落とす悔しい走りになったので、そのリベンジとして区間賞争いをしたいです」と力強かった。 順当なら、石田と小林が前半のポイント区間を担うことになるだろう。そして終盤のロング区間には、頼れる主将が控えている。 梅崎は前回の箱根駅伝2区を1時間06分45秒の区間6位と好走。5月の関東インカレ1部ハーフマラソンで日本人トップ(2位)に輝くなど、力強い走りでチームを引っ張ってきた。8月は北海道マラソンで夏マラソンを経験。本人は、「何区を任されても区間賞を狙える走りをしたい」と意気込んでおり、全日本では"順位"を決める走りが期待できる。 出雲を欠場した4年生トリオに続いて、3年生の奮起も"鉄紺の覚醒"には欠かせない。 前回4区(14位)を担った緒方澪那斗が、「昨年は走るだけで終わってしまったので、今年は区間賞を狙っていきたい」と言えば、前回7区(18位)に抜擢された西村真周も「昨年はよくなかったので、自分がチームに勢いをつけられるようにしたいと思っています」と前回のリベンジに燃えている。 それから出雲駅伝(3区)で失速した網本は、「ひとりで淡々と走るのが得意」というタイプ。全日本の後半区間(5~8区)なら日本インカレ10000m8位の実力を存分に発揮できるだろう。また岸本遼太郎は「スピードより距離に適性があるので、全日本は後半区間を走りたい」と箱根10区で見せた快走を伊勢路で再現するつもりだ。 そこに1年生パワーが加われば、さらに面白い戦いができる。 特に宮崎は昨年の全国高校駅伝1区を区間3位と好走している選手で、6月の全日本選考会は3組で4着に入った。腰を痛めた影響で夏合宿は出遅れていたが、出雲はアンカーの大役を務めた。全日本でもポイント区間を担う可能性がある。 前回は1区を11位でスタートすると、2区で14位に転落。その後はさほど浮上できず、過去ワーストの14位に終わった。今回は序盤で流れに乗って、狙い通りに「上位争い」を繰り広げることができるのか。"その1秒をけずりだす"鉄紺の継走を楽しみにしたい。
酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato