増える中国移民を結びつける“バーチャル・チャイナ”とは…愛国心が強いはずの中国人が祖国を捨てる「不穏な理由」
コロナ禍のもう一つの後遺症は、長らく続いてきた不動産バブルの崩壊である。景気の悪化によりマンションが売れなくなり、デベロッパーの多くは債務超過に陥った。若者失業率の上昇を受けて、一般家計は生活防衛に走っている。消費低迷が長期化し、マンションはますます売れなくなっている。不動産不況は予想以上に長期化する様相を呈しているのだ。 コロナ禍の後遺症が続くなか、北京大学の張維迎教授(経済学)は、「今の中国で生活に満足している人を探しても、なかなか見つからない」と述べている。 冒頭でも紹介した海外移住の詳細について触れていこう。 中国の“勝ち組”である超富裕層は、コロナ禍以前から多くの財産を中国国外に置いていた。彼らはアメリカなどの国の永住権を所持しており、いつでも出国できる準備は整っているが、ビジネスの基盤は中国にあるため、夫は中国国内、他の家族は海外という別居体制が一般的だった。だが、コロナ禍を機に中国の将来に希望が持てなくなり、一家で祖国を離れる決心をしたのだろう。
「アメリカへの不法入国者が道中で命を落とす確率は1%ぐらい」
超富裕層ではないが、比較的裕福な知識人は、早い段階でマンションなどの投資物件を売却。正規のビザを取得して、アメリカなどの国へ移住するパターンが多い。 マスコミで頻繁に報道されているのは、中の下に位置する所得層の人々のアメリカへの不法入国だ。彼らの多くは大学こそ卒業しているが、資産はそれほど所有していない。正規ビザを取得できないため、命懸けで不法入国を試みることになる。中国パスポート保持者にビザが免除されている中南米の国々を経由して、アメリカへと渡ろうとするのだ。現地の斡旋組織スネークヘッドの話によると、アメリカへの不法入国者が道中で命を落とす確率は1%ぐらいだという。 なぜ危険を冒してでも、海外移住を目指すのか。彼らは普段からスマホにVPN(仮想専用線)をインストールしており、海外のウェブサイトを閲覧している。そのうちに中国政府のマインドコントロールから解かれ、より自由な生活を手に入れようと考えて、中国を離れることを決心するのだ。