<書評>相場への愛、相場師への尊敬があふれる『相場の世界~昔と今と~』
「ナンピン(難平)」は相場をやる人ならばたびたび見聞きする言葉だ。「指値」はもちろん、「早耳」「思惑」「買い占め」「提灯」、これは何となくわかる。では「南瓜割り」「オッパ取引」「虎市」「大海上」「ドテン」ともなると、もはや何のことかさっぱりわからない。
「利食い」という用語をあるメディアでは「当面の利益を確保するための売り」と回りくどい言い方をする。著者はこのようなわかりやすくて、味わい深い日本語が死語になりつつあることを嘆く。 「相場取引古語辞典」では、今でも現役でよく使われているもの、風前の灯のごとくかろうじて残る古き良き相場用語が、どのように生み出され、使われてきたのか、なぜすたれたのか、今の言葉に置き換えると、など単なる解説にとどまらず、著者の引き出しの多さを感じさせるエピソードをたくさん盛り込んで紹介している。 ほかに「マネー文学漫歩」、「先物寸言」、「蠣殻町ルポタージュ」など、長きにわたり経済記者として活躍してきた著者の”相場愛”と”投資家への尊敬”が詰め込まれた、現役相場師たちに贈る、今も昔も変わらない「投資へのヒント」が見え隠れする宝箱のような一冊。 『相場の世界~昔と今と~』鍋島高明著 発行:株式会社米穀新聞社 1500円(税別) 【鍋島高明(なべしま・たかはる】 1936年生まれ。59年早稲田大学政治経済学部卒、日本経済新聞社の商品部記者などを経て、編集委員時に、夕刊コラム「十字路」「鐘」、朝刊「中外時評」を執筆。現在は市場経済研究所代表取締役会長。