定時退勤のカギは「教師の力量」向上に尽きる訳、働き方改革での管理職の役割
「働き方改革」が好意的に受け入れられていない?!
小中学校における教職員の多忙な実態が広く世間に知れ渡るようになり、今や「教職はブラック」と言われるまでになってしまった。文部科学省が今年度初めに公表した「教員勤務実態調査」(2022年実施)では、前回の2016年調査と比べて小学校、中学校ともに教諭の1日の在校等時間は約30分縮減するなど改善が見られたものの、依然として学校現場では過重労働が続いている。ここでは奈良県の公立小学校で校長を務める中嶋郁雄氏に、管理職が実のある働き方改革を進めるうえでのポイントを考えてもらった。 【写真を見る】奈良県の公立小学校で校長を務める中嶋郁雄氏 学校現場の過酷な実態が明らかになって以降、「働き方改革」が文部科学省から教育委員会を通じて急速に推進されている。 しかし、学校現場に身を置いている者としては、「働き方改革」が多くの教師に好意的に受け入れられているとは言い難い。管理職による強制的なノー残業デーの設定や定時退勤の勧奨は、教職員の反感を買う危険性さえはらんでいるというのが、多くの小中学校の実態ではないか。 「山のようにある仕事を放り出して退勤などできない」「課題を抱える児童生徒や家庭が多いため、早く退勤するなんて不可能」と、はなから定時退勤に否定的になっている教師は少なくない。 今、社会の変化に伴って、教育現場にも急速な変化の波が押し寄せており、教師の多忙を招く一因になっている。また、保護者や地域住民からの要望にも応えなければならないという「空気」が、教師の時間を奪う原因にもなっている。 確かに、教師の仕事には際限がなくなってきているものの、時間も無限にあるわけではない。本来、最も時間を割かなくてはならない授業研究や子どもと触れ合う時間を確保するためにも、時間の効率的な使い方が重要になる。
マインドセットの見直しを、まずは心がけから
例えば、宿題チェックやテスト採点などは、授業の合間にできるわずかな時間を使って少しずつ進めるよう心がける。校務分掌の仕事も、職員室に戻ってくるわずかな時間に、できるものから少しずつ片付けていけば負担なくやり終えることができる。 「時間がないから……」と、ほんのわずかな時間を無駄に過ごすと、結局10分間も20分間も何もできずに、無駄にしてしまうことになりかねない。「すき間時間に、少しでも何かをやろう」と意識して行動することで、たとえわずかな時間であっても、ある程度の仕事を進めることが可能になる。 できる仕事にはすぐに手を付けることも重要だ。後回しにすることで、日が経つにつれてほかの仕事と重なり、時間の余裕も気持ちの余裕も奪われることになる。また、「書類を10分間で終わらせる」「この時間にできるところまでやる」など、時間を意識することが仕事の効率化を促し働き方を変えることにつながる。 こうした学級事務や校務分掌の仕事は、効率化と時間の捻出方法を工夫することでクリアできるはずだし、できるよう努力しなければならない。 問題になるのが、喧嘩やケガなど学校で生じたトラブル対応のために、勤務時間外に保護者と連絡を取らなくてはならないような場合である。学校外での児童生徒の問題行動で、夜遅くまで地域や警察などの関係機関への対応が必要になる場合もあるだろう。突然生じたトラブルで、勤務時間内に仕事を終えることが難しい場合は起こりうる。 しかし、たとえ児童生徒のトラブルや保護者・地域対応が多い学校であっても、定刻を大幅に超えて勤務しなくてはならない状況が、毎日続くわけではないはずだ。トラブルの多い学校に勤務していても、働き方を変える努力から逃れてはならない。何のトラブルもない時に、教師それぞれが定時退勤を心がけることが大切である。