「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2024」指揮者リチャード・カーシー&ナビゲーターささきフランチェスコ インタビュー
ディズニー・アニメーションや映画、テーマパークの音楽を、ニューヨークで活躍するヴォーカリストと大編成オーケストラの生演奏でお届けする「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会」。22回目の今年は、アニメーション映画『リトル・マーメイド』をフィーチャーし、33都市49公演を行います。その魅力を、アメリカでミュージカル『オペラ座の怪人』や多くのオペラ作品を指揮してきたリチャード・カーシーさんと、ナビゲーターを務めるささきフランチェスコさんに聞きました。 【全ての写真】アメリカで多くのオペラ作品を指揮してきたリチャード・カーシー ――「ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2024」がついに始まりますね。 リチャード 新しいコンサートが始まることを楽しみにしていました。私にとっては4回目のツアー。オーケストラの皆さんと再びご一緒できるので、緊張よりもうれしい気持ちです。 フランチェスコ 私はとても緊張しています(笑)。ナビゲーターの台本が出来上がるのは、いつも最後なので! ――ニューヨークでのリハーサルはいかがでしたか。 リチャード 今回のコンサートに出演するのは、ニューヨークで活躍する7人のヴォーカリスト。実は、「ディズニー・オン・クラシック」には全員初参加なんです。経験豊富な精鋭とはいえ、60人から80人の大編成オーケストラと共にパフォーマンスを行うのはなかなかない経験です。ブロードウェイでは、多くても20人程の演奏者ですからね。 その上、「ディズニー・オン・クラシック」では、大スクリーンにディズニー作品の素晴らしい映像が映し出されます。お客様は、ヴォーカリストのみならず、映像やオーケストラにも注目されるわけです。その中で、どんなパフォーマンスをするか。ニューヨークで鍛錬を重ねました。 ――公演を行うホールは、多くの場合、ブロードウェイの劇場よりも大分大きいですね。 リチャード その通りです!それに、訪れる都市ごとにホールの収容人数、形、構造が異なります。ですから、ヴォーカリストには、フレキシブルな対応が求められます。 ――リチャードさんご自身も、指揮者としてオーケストラを率いながら、ヴォーカリストに気を配りつつ、映像ともタイミングを合わせ、お客様にも心を向けるお仕事。大忙しではないですか? リチャード そうなんです。舞台上や、バックステージでも、常に様々なことが起こっています。見えないところでの、沢山のスタッフによる素晴らしいチームワークの賜物です。その中で、私自身は、「物語のメッセージ」にフォーカスするようにしています。曲に込められたメッセージや世界観に集中することで、全てが一つにまとまるように思うんです。 もちろん、実際にはヴォーカリストの息継ぎ一つひとつに耳を澄まし、それに合わせてオーケストラの演奏を調整するなど、様々なことを行います。でも、そういった技術面は、リハーサルを重ねることで、自然とうまくいくようになっていくんです。 ――やはり「ディズニー・オン・クラシック」の指揮をするのはすごいことなのですね! リチャード 毎回、ステージに立つ前に瞑想をして、気持ちを落ち着かせます。集中力や体調を整えることが欠かせないからです。様々な要素を含む豪華なコンサートだけに大変な時もありますが、皆様に拍手をいただいて、コンサート後はエネルギーに満ちた気持ちになることも多いんですよ。 ――今年の「ディズニー・オン・クラシック」では、日本の33都市をめぐります。 リチャード 様々な都市を訪れ、その土地ならではの新しい経験ができることをとても幸せに思います。ツアーの醍醐味ですね。例えば、札幌のビアガーデンは大のお気に入り(笑)。誕生日をみんなにお祝いしてもらうのが恒例になっていて。 また、私は猫3匹と暮らす猫好きなので、招き猫で有名な豪徳寺(東京都世田谷区)も大好きです。日本のお気に入りスポットがどんどん増えていっています。 フランチェスコ 昨年、一緒に猫カフェに行ったんです。すると、黒猫たちが一斉にリチャードさんのもとに集まっていって!さすが指揮者だ!と思いました(笑)。 リチャードさんが指揮をされている時の表情はお客様からは見えませんよね。まるで包み込むような素敵な笑顔なんです。猫たちが集まってくるのもわかります。 リチャード 私はポーカーフェイスはできない方なので(笑)、物語の中のキャラクターやヴォーカリストたちの熱い感情を感じると表情に出てしまうんです。 フランチェスコ ピアニストや俳優等、表現者として活躍してこられたこともありますが、リチャードさんの温かいお人柄が表れているのだと思います。 ――リチャードさんが登場すると観客席から大歓声が上がりますよね。 リチャード 前任のブラッド・ケリーさんの功績が大きいと思います。とても愛されていましたからね。私も、街で声をかけていただいたり、多くの方に応援いただいて、とてもありがたく思っています。 私は、何年にもわたりブロードウェイで『オペラ座の怪人』の指揮を振ってきました。『オペラ座の怪人』にも、誕生日やプロポーズなどの特別な機会にお越し下さるお客様は多くいらっしゃいます。でも、「ディズニー・オン・クラシック」は、それとも少し違う。奏者とお客様が温かい仲間のような一体感を感じられる特別な機会なんです。 ――『オペラ座の怪人』と「ディズニー・オン・クラシック」では、指揮をする上でも違いを感じますか? リチャード 『オペラ座の怪人』では、私たちは舞台の下にいて、姿が見えません。物語に音楽が溶け込んで、私たちの存在に気づかれないのが一番の成功です。一方で、「ディズニー・オン・クラシック」では、私を含めオーケストラは舞台の上にいますから、お客様に見ていただけます。 また、ブロードウェイや全米ツアーでは、多くの場合毎回キャストが違うんです。「ディズニー・オン・クラシック」では同じメンバーで日本を回るので、特別な絆が生まれます。 ――今年のテーマは、「Our Wishes ~未来へ」ですね。 リチャード とても気にいっています。ミュージカルには「I wishソング」といって、主人公の「願い」が込められた歌が登場することが多いのですが、第1部ではまさにそういった曲が集められています。 私自身にとっては、『ポカホンタス』(1995)の「カラー・オブ・ザ・ウィンド」が、とても大切な曲。自分に自信を失っていた頃に出会い、願いを込めながら何度も聴いていた歌だからです。ジュディ・クーンの声も大好き。 ――他にもお気に入りのディズニー・ソングはありますか? リチャード たくさんあります。例えば、『シンデレラ』(1950)の「夢はひそかに」が好きです。今回のコンサートで演奏する曲の中では、『ピーター・パン2 ーネバーランドの秘密ー』より「右から2番目の星」も大のお気に入り。『ピーター・パン』(1953)が子供の頃から大好きで! フランチェスコ 僕は、『魔法にかけられて』(2007)が大好きで、車の中で、よく聴いています。マーベル作品も大ファンなので、サウンドトラックも聴きます。 リチャード 私は『スター・ウォーズ』の音楽も大好き!今回のコンサートでも演奏するのですよ!15歳の頃、隣町の映画館にいって、満杯の観客と共に観た興奮を今も覚えています! ジョン・ウィリアムズが紡いだ『スター・ウォーズ』の音楽は、今やワーグナーの『ニーベルングの指環』を超える長さです。そんな『スター・ウォーズ』の音楽を振るのは、今回が初めて!ずっと取り組みたかったので、大変うれしく思います。