「自分らしく働く」を諦めないで! 自分の「やりたい仕事」と「強み」は、こうすれば見つかる
創業の原動力になった、「働き方の未来」を描いたあの名著
やりたい仕事に就くためには実務経験が重視されるので、「学んで終わり」にしないことも重要です。リスキリングでは就労支援がついた講座を選ぶのもよいと思います。学んだことを今の仕事に活かすとか、活かせるようなプロジェクトに兼務で参加できないか上司にかけあうのもいいですね。 3つめは、「理想のライフスタイルを実現するためのスキル」です。「地方に住みながらリモートで働きたい」「介護をしているので在宅がいい」などと、理想の生き方やライフスタイルから逆算して何を身につけたらいいかを考える方がしっくりくる方もいます。在宅のスタイルがよいなら、在宅でも可能なデジタルマーケティングを学ぶ、といったことです。 ──3つのポイント、意識してみます。仕事の効率化に関するスキルだと、AIをどう活用し、AIとどう協働していくかが問われそうです。 AIといえば最近、AIの専門家による講演で面白い話を聞きました。カスタマーサポートも、AIチャットボットの導入により、コミュニケーションが滑らかになっているというのです。コールセンターのトラブル対応では、いきなり怒鳴る顧客もいて、オペレーターも精神的にハードな面があります。ですが、AIが一次対応をすることで、トラブルに関する情報整理をして、必要なケースでのみオペレーターにつなぐ形になった。すると、オペレーターが顧客に怒鳴られることが減り、コミュニケーションがスムーズになったそうです。 人間の仕事がAIに代替されるのでは、と不安を抱く方も多くいます。ですが、AIの活用で、「人間にしかできない価値ある業務」にますます注力しやすくなると思います。 ──田中さんのキャリアや価値観に影響を与えた本についてお聞かせいただけますか。 リンダ・グラットンの『ワーク・シフト』です。過去20年間の生き方や働き方の常識が大きく崩れつつあることを教えてくれた一冊です。この本が出た2012年当時はちょうど、日本の働き方に課題を感じて、共同創業者となる仲間たちと起業を考えはじめた時期。そんなときに話題になった『ワーク・シフト』が非常に面白くて。彼女たちと本の感想をシェアしながら「こういう世界をつくりたいよね」と語り合いました。 印象的だったのは、世界各地からリモートで、プロジェクトベースで働く姿が具体的に描写されていたこと。当時は働き方改革の前で、長時間オフィスで働くことがよいという価値観が一般的。私も周囲の人もそこに息苦しさを感じていたし、ワークとライフの両立に対して焦りや葛藤を抱いていました。 だから、本書の描く未来図に衝撃を受けましたし、「時間や場所にとらわれない働き方」を広めたいという思いが強まりましたね。フリーランスで働きたい女性と企業とをつないで仕事のマッチングをするという、創業初期からのサービスにもつながりました。『ワーク・シフト』は、Waris立ち上げの原動力になった本なんです。 ──最後に、田中さんの今後のビジョンについてお聞かせください。 ライフステージの変化に応じて、多様な働き方を柔軟に行き来できる社会をつくりたいと考えています。働く期間が長期化しているので、会社員として一社に勤め続けること自体が珍しくなっていくと思うんですね。転職やフリーランスになる期間もあれば、「サバティカル」という職務を離れた長期休暇をとるケースもある。このように主体的にキャリアを移行することを、Warisでは「キャリアシフト」と表現しています。 最近、「フリーランスだったが50代で会社員になった」という方に立て続けに3名お会いして、そういうのはとてもいいなと思ったんです。もう「35歳転職限界説」は過去のもの。売り手市場も相まって、40代、50代でも再就職や転職をする方は増えています。だから、挑戦したいというご本人の意思があれば、色々な可能性が広がっているのです。 そんななかで、Warisで行ってきた仕事のマッチングや成長を支援するリスキリングの事業だけでなく、多様な選択肢をお伝えしながら、一人ひとりのキャリアシフトを支援していけたらと思います。 <田中美和(たなか みわ)> 株式会社Waris共同代表/一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会理事/国家資格キャリアコンサルタント 慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、日経BPで編集記者として働く女性向け情報誌「日経ウーマン」を担当。取材・調査を通じて接した働く女性の声はのべ3万以上。女性が生き生き働き続けるためのサポートを行うべく独立し、2013年、多様な生き方・働き方を実現する人材サービス企業Warisを創業し共同代表に(現在ベネッセグループ入り)。フリーランス女性と企業との仕事のマッチングやリスキリングによる女性の就労支援に取り組む。最近では女性役員紹介事業を通じて意思決定層の多様性推進にも尽力。 <flier編集部> 本の要約サービス「flier(フライヤー)」は、「書店に並ぶ本の数が多すぎて、何を読めば良いか分からない」「立ち読みをしたり、書評を読んだりしただけでは、どんな内容の本なのか十分につかめない」というビジネスパーソンの悩みに答え、ビジネス書の新刊や話題のベストセラー、名著の要約を1冊10分で読める形で提供しているサービスです。 通勤時や休憩時間といったスキマ時間を有効活用し、効率良くビジネスのヒントやスキル、教養を身につけたいビジネスパーソンに利用されており、社員教育の一環として法人契約する企業も増えています。 このほか、オンライン読書コミュニティ「flier book labo」の運営など、フライヤーはビジネスパーソンの学びを応援しています。