日本橋屈指の手みやげ! 梔色の包みも趣ある切羊かんと久寿もち。【今日の逸品】
〈江戸風御菓子司 日本橋 長門〉の切羊かん、久寿もち
カーサ ブルータスの人気企画「10選」シリーズから、こだわりの逸品をジャンルレスに日替わりでご紹介します。 【フォトギャラリーを見る】 かつて徳川家の御用菓子司を代々務め、家紋である双葉葵の使用を許された菓子商〈日本橋 長門〉。徳川吉宗公の時代に創業し、以来約300年、保存料などは一切使わず、日々の菓子を作り続けている。華やかな絵柄の千代箱に収めた半生菓子と並び、店を代表する看板商品が「切羊かん」と「久寿もち」だろう。 どちらも誕生したのは戦後のこと。「切羊かん」は北海道産小豆「雅」を使った蒸し羊羹で、香り豊かな餡の味わい、手ごねでむっちりとコシを出した噛み心地が持ち味。薄くスライスした羊羹を、さらにほどの幅に拍子切りに仕上げたのは、「出先でもすぐ食べられるように」という配慮から。撥水や通気性、そして抗菌作用に優れる竹皮の包みも、変わらぬ風情を生んでいる。 もう一方の「久寿もち」は、その響きから連想する「くず餅」ではなく、実は三角形に切り分けたわらび餅。発売当時、東京では天然発酵させた小麦デンプンで作るくず餅が一般的で、関西で親しまれる蕨粉を使ったわらび餅はまだ馴染みがなかったため、くず餅と同様の三角形に切り、この名で販売したのが始まり。飴色に澄んだ生地、うたかたのように儚くデリケートな歯ごたえこそ、稀少な国産わらび粉を丹念に練り上げている証。 公式サイト
photo_Junichi Kusaka text_Yoko Fujimori