若者や女性、子ども連れも炊き出しに――生活支援団体が語るコロナ後の変化
周りに困っている人がいるときに何ができるか
――コロナ禍だけでなく、リストラや病気、災害などで経済的に困窮したとき、どういった機関に問い合わせればよいでしょうか? 稲葉さん: 本来は役所が受け止めてくれるといいのですが、残念ながら生活保護行政については自治体間の格差があります。相談しても申請させてもらえないなど、不当な対応にあってしまった場合は、私たちのようなNPOや法律家の相談窓口にご相談ください。 ただ、生活が苦しい方は疲れ果てている方が多く、役所で断られると精神的なダメージを受けて、別のところに相談する気持ちになかなかなれないものです。最初に相談を受けた機関がきちんと対応してほしいと思っています。 ――身近な人が困っているときに何かできることはあるでしょうか? 稲葉さん: 生活保護受給に至らないまでも、家賃の支払いが厳しいときは「住居確保給付金」という制度も利用できます。身近に困っている方がいたら、こうした制度や支援団体の情報を伝えて、ご本人とつないでほしいですね。 また、自分の家や職場の近くで路上生活者の方を見かけたら、各エリアの炊き出しの情報や行政の支援情報がまとめてある『路上脱出・生活SOSガイド』を手渡していただく方法もあります。ビッグイシュー基金の事務所にお問い合わせいただければ、郵送料のお支払いのみでお送りすることもできます。 声をかけて渡すのはちょっと勇気がいるという場合は、寝ている方の枕元にそっと置いていただくだけでも構いません。いずれにしても、自分を気にかけている人がいることはメッセージとして伝わりますからね。
――路上生活者や生活困窮者に対して、たびたび「自己責任」という言葉が投げかけられることがあります。 稲葉さん: そういう状況に陥ったことが自己責任かどうかを問うことに意味があるのかなと思いますね。路上生活をしている方々の多くは「自分の責任なんだ」と責任を感じていらっしゃいますし、一般の方も「そういう状況になったのは自己責任だ」と言う方もいらっしゃいます。 でも、百歩譲って自己責任だとしても、貧困を放置してもいいということにはならない。自己責任かどうかにかかわらず、生活が苦しくて住まいを失っている人たちを放置している社会でいいのか、その人たちに対して手当てをして支える社会になれるのかという方が大切な問いなんじゃないかと思います。 ---- 稲葉剛 1969年、広島県広島市生まれ。東京大学教養学部在学中から平和運動、外国人労働者支援活動に関わり、1994年より東京・新宿を中心に路上生活者支援活動に取り組む。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。2019年、認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表に就任。 文:佐々木ののか (この動画記事は、TBSラジオ「荻上チキ・Session」とYahoo! JAPANが共同で制作しました)