【裁判詳報】北海道の“スナックママ遺体なき殺人” 被告の男、あいまい・かみ合わない証言も
北海道・釧路地方裁判所で2024年12月9日、殺人と死体遺棄、窃盗、詐欺、詐欺未遂の罪に問われている足寄町の無職・志渡典吉被告(59)の裁判員裁判が始まりました。 検察によりますと、志渡被告は2023年11月10日午前11時半ごろ、スナックを経営する延本真弓さん(66)の自宅寝室で、延本さんの頭をハンマーでおよそ20回殴ったうえ、首を手で絞めて殺害し、遺体を約35キロ離れた山林に遺棄したとされています。 事件のおよそ1か月後、志渡被告が案内した山林近くの凍った川の中から左足の骨の一部を発見。 周辺では爪も見つかり、いずれも延本さんと確認されていますが、他の遺体はクマやキツネなど動物が持ち去った可能性があるといいます。 さらに志渡被告は、遺体を遺棄した帰りの車の中で、延本さんのトートバッグに入っていた財布からクレジットカードなど3点を盗んだうえ、ドラッグストアで医薬品などの購入に使用した罪にも問われます。 初公判で志渡被告は、グレーのワイシャツに黒色のズボン、短めの髪型に銀ぶちの眼鏡をかけ、法廷に現れました。 検察側が起訴状を読み上げている間、落ち着かないのか、証言台で両手を腰に当てたり、後ろに組んで聞いていた志渡被告。 罪状認否について「大きな間違いはありません」などと起訴内容を認めました。 ◆2人の関係 志渡被告は15年ほど前、延本さんの店に客として訪れ、当時は好意をもっていまいしたが、7~8年前には交際を申し込み断られていて、犯行時は友人でした。 時には延本さんの店を手伝ったり、2人の友人などと旅行に行くこともあったといいます。 一方で延本さんは事件当時、自宅で交際相手と同居していました。 検察は志渡被告が2022年12月、足寄町に戻った際に無職となり、失業保険や母親の財布から抜いた金などでパチンコに興じ、携帯電話を料金滞納で強制解約されたと指摘しました。 ◆犯行状況 被告人質問では「午前11時半ごろ、車を借りるため寝ていた延本さん宅を訪れ了解を得られた」と証言。 しかし、燃料代を貸して欲しいと頼むと、延本さんに理由を聞かれ、本州で働くため帯広のハローワークに行くと答えると、「いやだ」と断られ、ベッドの枕元にあった護身用のハンマーを延本さんが振り回し、自分の頭に当たったと話しました。 その後、志渡被告は馬乗りになり手や口を押えたりハンマーで殴ったと証言しましたが、核心部分の殺意や動機については「殺すつもりはなかった」「覚えていない」などと、あいまいな証言を繰り返しました。 供述調書の内容に沿って「延本さんの死亡を知ったのはいつ?」と質問されても、犯行の1か月後「逮捕された時に知った」とかみ合わない証言も。 また、犯行の発覚を遅らせるため、ハンマーを洗い、寝室などの血痕をふき取り、遺体を山林に遺棄したと話す一方で、財布から3枚のカードを盗み使った罪については、「使用履歴が残るので早く捕まりたかった」という不自然な趣旨の話をしていました。 ◆今後 公訴事実に争いはなく刑の重さが争点。 検察側は、犯行態様が悪質で動機が身勝手。結果が重大で家族も「許せない。死刑か無期懲役にしてほしいと話している」と指摘。 弁護側は、志渡被告が供述しないとわからないこともあった。責任能力は争わないが精神状態が犯行の動機や経緯に影響していないか考慮を求めています。 ◆裁判日程 12月10日、被告人質問の続き12月11日、求刑12月13日、判決