【昭和の青春的ホットハッチの世界】最後のルノー・スポールと寸止めゴルフGTI!
寸止めが効いたサジ加減こそゴルフGTIの真骨頂
今回ウルティムとともに連れ出したゴルフGTIは、元祖ホットハッチというべき存在だ。1974年に初代ゴルフに用意されたGTIこそが、今に続く高性能FFハッチバックの最初であり、欧州ではホットハッチを『GTIクラス』と総称することも多い。 メガーヌR.S.がフロントサスペンションや後輪操舵など、シャシーの基本ハードウエアにまで手を入れているの対して、ゴルフGTIの基本設計は、エンジン以外はあくまで標準ゴルフのそれと変わりない。日本仕様は電子制御可変ダンパーが最初から備わるが、欧州では固定減衰ダンパーが標準である。 ちなみに、ゴルフGTIはすでにマイナーチェンジされたが、今回の試乗車は従来型。とはいえ、各種情報を見るに、マイチェンモデルでも走り味には大きな変化はないようだ。 2.0リッター4気筒直噴ターボというエンジン形式は、メガーヌR.S.も含めたライバルと同等といっていいが、245ps/370Nmというピーク性能には『寸止め感』が漂う。それを受け止めるシャシーがメガーヌR.S.ほど凝ったものではないのに加えて、VWにはゴルフRという4WDの上位モデルがあることも無関係ではないだろう。 ただ、ギリギリまで鍛え上げられたメガーヌR.S.と比較すると、その寸止めが効いたサジ加減こそが、ゴルフGTIの真骨頂でもある。ダンパーをコンフォート寄りに設定したゴルフGTIは、そこいらの上級セダンを凌ぐほどの乗り心地を披露する。それでも400Nm近い最大トルクを前輪だけで受け止めるのは簡単ではないはずだが、そこはメガーヌR.S.にも備わらない電子制御LSDが、実にいい仕事をしている。 今後はBEV化にひた走ると思われたVWも、その歩みのスピードは少しばかり緩むようである。それでも、これまでのような際限ないスピード競争とはいかないかもしれないが、ゴルフGTIには元祖としてホットハッチの火を消さないでほしいと願う。
佐野弘宗(執筆) 佐藤亮太(撮影) 平井大介(編集)