返済中の住宅ローン金利引き上げへのカウントダウンは始まっている! 銀行員が予想するシナリオとは
銀行員としての希望~ローン返済が困難になった人への対応
ここからは、銀行員として長年にわたり住宅ローンの返済に困ったお客様に対応してきた私が、金利上昇時に必要だと考える法整備やセーフティーネットなどを解説します。 現状、住宅ローンを借りている人の65%以上が変動金利(参考4)となっているため、銀行が返済中の住宅ローン変動金利を一斉に引き上げることになったとしたら、返済額が増えてローンを返し続けるのが難しくなる人も多く出てくると思います。 (参考4:国土交通省 住宅局「令和4年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書」) そもそも、住宅ローンの金利は借りる人の年収や勤務先といった属性により人それぞれ個別に決まるので、他人と比べて高い低いと言うべきものではなく、また個人的に金利の上下動があったとしても、それは文字通り個人的な問題に過ぎません。 しかし、いま不安視されているのは、日銀のゼロ金利解除を発端に、返済中の住宅ローンの変動金利が一斉に引き上げられる事態であり、住宅ローン全体の金額(住宅ローン利用件数は約1116万件、ローン残高は約192兆円)(参考4)からも、社会的な問題に発展する可能性はあると思っています。 もちろん、ここからお話しする内容には私の希望的観測も含まれていますが、それでも銀行員として長年、お客様から「返済が苦しい」などの相談を受けてきたからこそ、政府などの外的な支援が必要だと痛感して考えたものです。 そういった意味では、全く根拠がないとも思っていません。 希望1.住宅ローン「防御機能」の強化 住宅ローンの変動金利では、金利上昇時に備えた「5年ルール」「125%ルール」という2つの防御機能がありますが、すべての金融機関の住宅ローンに付随しているものではありません。金融機関の方針やローンの商品設計上、こうした防御機能がない住宅ローンも存在します。(参考5:知るぽると 金融広報中央委員会「金利タイプの種類 ― 新たに住宅ローンを借入れる」) もちろん、それらを理解したうえで利用している人もいるのですが、金利上昇への不安が高まる中で、銀行員として返済が困難な人への対応をしてきた私は、この2つの防御機能を備えた住宅ローンが増えてくれれば、あるいは新タイプの防御機能などが出てきてくれれば、と考えています。 希望2.金利上昇で返済が困難な人へのサポート 次に、銀行員としては金利上昇で返済が困難な人へのサポートが少しでも手厚くなってほしいと、個人的願望も含め考えています。 今回、仮に金利上昇局面を迎えるとしたら、それは社会環境や経済的な要因なので、大災害や不況といった事態とは事情が違うことはわかります。 しかし、多くの人が低金利時に住宅ローンを利用し、現在も返済していることを考えれば、「金融円滑化法」(参考6)などの不況時の対策や、東日本大震災、コロナ禍の住宅ローン返済へのサポート策(参考7)などのようなセーフティーネットも考えるべきではないかと考えます。 参考6:住宅金融支援機構「金融円滑化への取組について」 参考7:政府広報オンライン「新型コロナの影響でローンの返済ができない・・・。「破産」等によらない債務整理の方法があります。」 もちろん、住宅ローンを借りて返済するという、あくまで個人的な事情に対して、サポートとは言っても限界はあると思います。 たとえば、金融円滑化法が施行される前後には、当時の不況下で返済が困難な人の「債務元本(住宅ローン残高のこと)の一部カット」も取り沙汰されましたが、結局、債務カットは実現されませんでした。 ですから今後、金利上昇でローン返済額が増加しても、法的に債務カットを保証してしまうと、今度は経済が成り立たなくなる心配もあり、カットは実現しないでしょう。 とはいえ、多くの国民が利用している住宅ローンなので、少しでも安心につながるようなサポート体制ができてくれたら、と銀行員の私はやはり考えてしまいます。
まとめ~金利上昇に耐えるべきか? 返済を延ばすべきか?
今回は、銀行員としての希望的な考え方を含め、返済中の住宅ローン金利上昇について解説してきました。 銀行員として、また、住宅ローン返済が困難な人への対応をしてきた立場として、自己責任論を唱えることはありません。 しかし、もしもこの先、住宅ローン金利の上昇により返済が苦しくなった際、リスケなどの救済措置を利用するかどうかについては、自己責任となることは、覚えておいてください。 666bd87a905bd4cef2000000
加藤隆二