不安定なのは自分のせいですか 49歳独身・非正規雇用、ずっと手取り月15万円の氷河期世代、結婚にも憧れるけれど…
大学卒業後、ずっと非正規で働いてきた玲奈さんは実家で両親らと暮らしている。狭くても心から休める空間が欲しいと思うようになり、住宅ローンを検討し始めた。しかし、「独身・非正規」は壁になる。イベント会場でのやりとりを通してそう感じた。
8月に9年間勤めた運輸関係会社を退職後、正規雇用を目指して就職活動。この秋、初めて正社員として交通会社の内勤業務で働き始めたが、新卒のような研修はなく、3交代のシフト勤務に身体が追いつかないなどの問題もあり退職を決めた。今はこの先の働き方を、改めて模索中だ。
自分たちが少子化の原因か
理解し合える人との結婚に憧れはある。ただ、交際が結婚に至ることはなく、独身で過ごしてきた。団塊ジュニア世代で、就職氷河期世代でもある玲奈さん。非正規雇用で経済的に不安定なため結婚していない人が多い年代として、自分たちが少子化の原因のように言われることに心が痛んだ。
「子育てファースト」政策の犠牲に
岸田政権は「異次元の少子化対策」として、児童手当拡充や育児休業給付の引き上げなどを打ち出している。一方で、産育休の社員の穴埋めで業務量が増え体調を崩した経験がある玲奈さんは、そうした穴埋めをする人に対する特別な補助などが手薄な現状に疑問を持つ。独身非正規だけの問題ではないが、「子育てファーストの陰で犠牲になる人が出る構造にも注目してほしい」と吐露する。
結婚して夫に扶養=「標準世帯」への違和感
女性は結婚して主婦となり、正社員の夫に扶養されるという「標準世帯モデル」がいまだに幅を利かせている。年金制度もモデルを基に設計されており、玲奈さんは自身が将来受け取る年金額はかなり少ないと予想。「就職氷河期世代はもはや、断崖絶壁のクレバス(氷河の割れ目)世代だと友達同士で話すこともある」と自虐的に話す。
最近玲奈さんは、非正規労働に関するニュースを、家族の中で話題にした。大学院を出て自治体の会計年度任用職員(非正規職員)で働いていた男性が、低賃金と職場でのパワハラに苦しんだという内容。玲奈さんは男性の境遇に心を寄せたが、家族は「自分で選んだこと。大学院を出るくらい優秀で経済的余裕があれば、早く辞めて次を考えられたはず」とにべもなかった。