「ジャングルジムから落ちた」6歳の少女の命を奪った兄はうそをついた ネグレクトされた異父兄妹の10日間【大津女児虐待死事件(上)】
母親は若い頃からたびたび薬物事件などで実刑判決を受け服役していたため、子どもたちは児童養護施設や親戚の家などを転々としながら育ってきた。兄は幼少期と小学校高学年の時に数年間、母親と暮らしたことがあるが、妹は0歳の時に施設に入所してから6歳になるまで、「家族」と暮らしたことは一度もなかった。 それでも、母親は一人娘を溺愛し、周囲には「あの子とは絶対に離れたくない」と語っていたという。施設にいた彼女を引き取るため、2020年11月に当時の夫と大津市内に木造2階建ての家を借りた。生活費を得るため介護の仕事も始めた。児童養護施設や大阪市の児童相談所の支援を受けながら、外出や外泊といった交流も約1年にわたって継続。正式に一緒に暮らすことが決まったのが2021年3月、実愛ちゃんが小学校入学を控えたタイミングだった。 ちょうど同じ時期、高校を退学した兄は京都の里親とトラブルになり、その家庭を出ることになる。兄は当初、京都府の児相による調整の下、解体工事業者で働きながら自立生活を送る予定だったが、母親と連絡を取るうちに里心が付き、なし崩し的に同居することになった。
▽「家族」の破綻、薬物と男たちのたまり場に 母親が再婚した養父に子どもたちとの血のつながりはなく、兄と妹も一緒に暮らすのは初めて。母親を介することで、他の3人がかろうじてつながっている。そんな不安定な生活はすぐに破綻した。 養父は2021年5月ごろから自宅に戻らなくなり、6月には覚醒剤を所持していたとして京都府警に逮捕される。残された3人が住む家には、母親の知人男性たちが複数出入りし、彼らのたまり場のようになった。近隣住民らによると、40~50代の男たちがタバコのポイ捨てをしたり、公園のフェンスで立ち小便をしたりして問題になったという。「けんかか何かで警察沙汰になったこともあった」と話す人もいた。女児死亡後の県警の捜査では、家の中から大麻や覚醒剤の使用に使ったとみられる大量の注射器が見つかった。 5月下旬から6月にかけて、母親と兄、妹の3人ともが新型コロナウイルスに罹患した。母親は新型コロナに感染したため介護の仕事ができなくなったとして、生活保護を申請。この頃から家を空けることも増えた。