「ジャングルジムから落ちた」6歳の少女の命を奪った兄はうそをついた ネグレクトされた異父兄妹の10日間【大津女児虐待死事件(上)】
7月に入ると、実愛ちゃんは学校で「お母さんがいない日がある」と打ち明けるようになる。心配した教師らは「お母さんはいてるか?」「ちゃんとごはん食べてるか?」と声をかけ、家まで様子を見に行くこともあった。 ▽ボール遊びに付き合う「良いお兄ちゃん」 急ごしらえの家族関係が破綻し、見知らぬ大人たちが出入りするようになっても、兄妹の関係は良好とみられていた。近くに住む女性は「夕方になると、よく2人でボール遊びやスケボーをしていた。良いお兄ちゃんだった」と話す。一家の親族の男性も取材に対し「兄も最初の頃は幼い妹をかわいがっていた」と語った。 家から約1キロ離れたコンビニでは、2人が連れ立って買い物に来る様子が何度も目撃されていた。1学期が終わり、夏休みの初日となった7月21日未明にも、2人はこのコンビニを訪れたことが確認されている。この時は実愛ちゃんから「千円ほしい」と声をかけられた女性客が不審に思い、子どもの深夜徘徊事案として警察に通報した。
コンビニオーナーの男性はこの日のことを「防犯カメラに映っていた2人は、駐車場の端っこの方で遊んでいるように見えた。女の子もお兄ちゃんになついている感じだった」と振り返る。来店が真夜中だったことを除けば「ごく普通の兄妹に見えた」という。 家庭裁判所によると、兄が妹に暴力を振るうようになったのはこの翌日からだ。 ▽「おまえなんか死ね」と言われ激高 家庭裁判所が兄の処分を決めた際の決定文や、関係者の話を総合すると、実愛ちゃんは7月後半から母親の不在を理由にぐずることが多くなったようだ。「お母さんのいるところに行きたい」。年端もいかない妹にそう訴えられても、兄は携帯電話すら持たされておらず、連絡を取るすべは無かった。 夏休みで学校のない時期。2人きりで過ごす時間が長くなるにつれ、兄の中で妹への愛憎相半ばする感情が膨れ上がったのだろう。慣れない家事に苦労する日々の中で、いらいらを募らせた妹から股間を蹴られたり、「おまえなんか死ね」と言われたりしたことに激高し、何度も手を上げるようになった。家庭裁判所の認定によると、凶器は使用していないものの、自宅で殴る蹴るの暴行を執拗に繰り返したとされる。