政治が「変わる」ために必要なのに誰も本気にならない「野党変革」...野党間で死闘が繰り広げられた「衆議院議員補欠選挙」が実はその試金石になっていた!?
黒船なき令和の日本で、革命なき安逸の日々のなかで、激烈な政権交代は起きるのか? しかし、いま変わらなければ――かならず日本は、沈む! 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 百戦錬磨の戦略家、橋下徹(55歳)。時代を見定め、歴史を洞察し、日本人の本質を透徹した先に見えた悪魔的リアリズム、それが「政権変容論」だ。橋下氏は言う。 「『政権変容』が劇的に新しいのは、自民党がどうであろうと関係なく、野党が腹を括って決断しさえすれば次の総選挙で実現できるところです」 2024年の選挙から、グレートリセットは始まるのだ。 7月19日発売の最新刊『政権変容論』(講談社刊)から、特別に内容を抜粋してお届けしていこう。 『政権変容論』連載第34回 『生産性が「あまりにも低すぎる」国会議員...その改善のために橋下徹が国会に求める、「民間なら当たり前」の「簡単すぎる規則改正」』より続く
2024年衆議院補選を事実上の予備選挙と捉えよ
―野党がまず変わるべき、という橋下さんの理想は分かりました。 ただ現状、「野党間予備選」を本気でやろうという声は、野党から聞こえてきません。突破口はどこにあると思いますか。 橋下:野党国会議員の意識、特に野党党首の意識が変わるしかないでしょうね。 「自分たちの党勢拡大よりも、野党の政策を実現するために、野党が与党を内部からチェックするために、自公過半数割れにしたほうがいい」と野党党首が強く認識することしか、予備選挙に至る方法はないでしょう。 今のところ維新の馬場伸幸代表も、立憲の泉健太代表も、まずは自分の党の勢力拡大を第一に考えています。こうなると、野党党首が自主的に意識変革をすることに期待するよりも、意識変革せざるを得ない状況が到来するのを待つしかありません。 その芽が少し出てきたな、と感じたのが、2024年4月28日に投開票された衆議院議員補欠選挙でした。
自民党を引きずり落とすために
―ほう、それはどういうことですか? 橋下:亡くなった自民党の細田博之議員と、政治とカネの問題で辞職した自民党議員2人の議席を補うための、合計三つの補選です。さすがに政治とカネの問題について自民党への風当たりが強く、自民党は島根1区という一つの選挙区にしか候補者を立てることができませんでした。 残りの東京15区と長崎3区の二つは自民党不戦敗で、野党同士の決戦となりました。 特に維新と立憲のぶつかり合いは激しさを増しました。維新の馬場代表は、「立憲を叩き潰す!!」「立憲に投票しないでください!!」とアドレナリン全開でした。 このような野党間の潰し合いについて、55年体制を引きずる政治評論家たちは、「野党同士でそんなに激しくやり合ってどうするのか。野党がもめると結局自民党が得をする」という意見をすることが多い。 とにかく自民党を政権から引きずり下ろすために、野党はまとまれ、一致団結しろという主張。しかし政権交代ではなく、「政権変容」の必要性を説いてきたこれまでの僕の論を理解してくれた人は、この補選での野党間の潰し合いこそが、予備選挙であることに気づいてくれたはずです。 そうなんです、来るべき衆議院総選挙の「前に」野党が潰し合って、野党の候補者を一人に絞ること、これが予備選挙です。 見てください。この4月の補選のうち、東京15区と長崎3区の二つの選挙区では、見事に予備選挙の形になっていたのです。 表面上は「補選」という形での正式な衆議院選挙ですが、全国的な「総選挙の前の」、しかも野党同士でぶつかっている構図を見れば、これこそが予備選です。今回の予備選的な補選の効果、すなわち維新と立憲でいったん勝負がつく効果を、維新の馬場さんや立憲の泉さんが感じてくれたら、予備選構想が前に進むでしょう。 ―なるほど、それは今回の補選に対する、まったく新しい見方ですね。 『「野党間予備選挙」から、「政権変容」へ...そのために橋下徹が今維新に期待する「本当の維新スピリット」』へ続く
橋下 徹(元大阪府知事・元大阪市長)