学習指導要領の改定を諮問、「情報モラル」高める教育の検討求める…学校の裁量拡大も議論へ
阿部文部科学相は25日、小中高校のカリキュラムの基準となる学習指導要領の改定を中央教育審議会に諮問した。改定は10年ぶりとなる。デジタル化の進展を見据え、児童生徒の情報活用能力や情報モラルを高める教育のあり方について検討を求めた。学習進度などに応じて授業時間を柔軟に設定できるよう、学校の裁量を拡大することも議論する。文科相は指導要領と併せ、教員の確保策についても諮問した。
フィルターバブルなど「負の側面」顕在化
中教審は2年かけて審議し、2026年度に答申する予定。新指導要領に基づく授業は30年度以降に小中高校で順次始まる見通しだ。
諮問では、生成AI(人工知能)などのデジタル技術が発展する一方、デジタル化の負の側面が顕在化していることを指摘。中教審では、自分と似た意見や情報にばかり触れる「フィルターバブル」や「エコーチェンバー」といった現象を踏まえ、情報教育をどう充実させるかを検討する。情報教育は現在、中学校の「技術・家庭科」、高校の「情報科」を中心に行われているが、学校現場からは「生徒が十分に学ぶ時間がない」との声が上がっていた。
文科省は、学校の裁量拡大も課題に位置付けた。教員が創意工夫して授業を行えるよう、時間割や授業時間などの教育課程の編成を柔軟にする。小中学校の1コマあたりの授業時間を5分ずつ短縮するなどし、生じた「余白」の時間を活用して個々の児童生徒に合った教育をしやすくする。
また、総授業時間数については「現在以上に増やさない」ことを前提とした。教える内容が過剰となっているとの指摘を踏まえ、教科書の内容や分量のあり方について意見を求める。
今回は指導要領の改定に併せ、大学での教職課程や教員免許制度のあり方など教員の確保に必要な取り組みについても諮問した。社会人が大学院で学び直し、教員免許を取得できる仕組みの構築なども進める。
◆学習指導要領=小中高校で教える内容について、国が定めた基準。法的拘束力を持ち、授業などのカリキュラムや教科書編集の基となる。