D2C と卸売の適切なバランスは? 答えを出せずにいる新興ブランド
D2C新興企業にとって永遠の課題のひとつは、卸売とD2Cにおける売上拡大の適切なバランスを見つけることだ。 5年前、新興企業はできるだけ長くD2Cに留まることにより価値を見いだしており、スーツケースメーカーのアウェイ(Away)などのブランドは、Amazonのようなほかの大手小売企業を通じて自社商品を販売する計画は当面ないと高らかに公言していた。ところが2021年頃から、速やかに卸売に進出しはじめるD2Cブランドが増えてきた。一部のブランドは、FacebookやGoogle経由での顧客獲得コストが割に合わなくなり、売上拡大の多角化を望んだというよりはその必要に迫られた結果だった。たとえば下着ブランドのパレード(Parade)は2023年3月、大手小売店ターゲット(Target)に展開し、Amazonでの展開計画もあったが、夏に突然アパレルメーカーのアリエラ&アソシエイツ(Ariela & Associates)に買収された。 この5年間の経済的逆境に耐えることができたD2C新興企業は、より戦略的な方法で卸売にアプローチしようとしている。D2Cを永遠に続けるつもりで設立されるD2C新興企業はほとんどない。しかし話を聞いたD2C創業者のなかには、新たな卸売パートナーを獲得する時期について慎重に考えている者もいる。彼らは複数の量販店への展開を意図的に控えており、D2Cウェブサイトではリーチすることが難しい顧客にアプローチするという、特定の目的を果たす少数の小売店に卸売規模を大きく限定している。
コスト効率のいいAmazonは例外?
Amazonは例外だ。この5年間においてD2Cブランドは、大半の顧客がAmazonでのショッピングに慣れているということからチャネルとしてのその重要性を理解し、早期からAmazonには積極的に展開するようになっている。また、Amazonエージェンシーを雇用することでチャネルをナビゲートしてもらえるため、D2Cブランドにとってよりコスト効率よくアプローチできるチャネルでもある。またD2Cをより長く維持できるブランドは、D2Cチャネルがまだ成長しており、ユニットエコノミクスを持っているという共通の特徴がある。 「当社のD2Cチャネルは、もっとも収益性の高いチャネルではないにしても、それに匹敵している」とベビー用品ブランドのラロ(Lalo)共同創業者兼CEOを務めるグレッグ・デイビッドソン氏は話す。そのため、ハイチェアやプレイキットなどを販売するラロは「依然としてD2Cで十分効率的に成長しており、ブランド提携すべき適切なチャネルについて実際に提携する前に熟考している」ので、さらなる卸売チャネルへの展開を控えることができているとのことだ。 現在ラロは自社ウェブサイトのほか、Amazon、ベビー用品通販サイトのベビーリスト(Babylist)、インテリアショップのウェストエルム(West Elm)、ベビー・キッズ用品を扱うインテリアブランドのポッタリーバーンキッズ(Pottery Barn Kids)で商品を販売している。また、ウェストコーストキッズ(West Coast Kids)というカナダの小売店でも販売されている。