冬の浴室ご用心‼ 昨季の県内入浴死9割が70代以上 温度差で血圧急変、心臓に負荷 知っておきたい専門家が勧める望ましいお風呂の入り方
寒くなる季節から増加するのが、浴室内での突然死(入浴死)だ。特に高齢者が多く、浴室や浴槽の温度差で血圧が急激に変動し心臓に負荷がかかる「ヒートショック」が主な原因とされている。鹿児島大学大学院法医学分野の研究グループは昨年、全国で初めて危険度を知らせる入浴時警戒情報の発表を始めた。今年も11月から始めた林敬人教授に、県内の状況や予防策を聞いた。 【写真】冬季の県内入浴死者数をグラフで見る
研究グループは県警捜査1課の協力を得て、2006年~19年の県内の入浴死を分析。発生しやすい最高気温や最低気温、日内の気温差を算出し、警戒指標を作成した。昨年11月から2月にかけ、県内を19カ所に分けて毎日の状況を「注意」「警戒」「危険」の3段階で研究グループのホームページで公開した。2月からはLINEアプリで毎日午後4時に通知した。 23年11月~24年2月の県内の入浴死者数は115人。うち70代以上が9割を占める。60代は7人で、60歳未満はいなかった。警戒情報との関係について、林教授は「高齢層に変化はなかったが、情報にアクセスしやすい若い世代で死者が減った。多少の効果が見えるのでは」と説明する。 入浴死を防ぐには、どうすればよいか。注意すべきは「温度差」という。血圧は温度が低いと上がり、温度が高いと下がる。林教授は、気温が低い朝晩ではなく、午後2~3時の比較的暖かい時間帯の入浴を勧める。38~40度の湯で、つかるのは5分以内が望ましいとする。肩までつかると水圧がかかり、心臓や循環器系の疾患が起こりやすくなるため、できるだけ避けた方がよいという。
高齢者に対しては、周囲の声かけも重要だ。熱くなりがちな一番風呂は避けるよう促したり、風呂に入っている間も声をかけたりする。林教授は「昨季は平均気温が高く、危険レベルが数日続くことはなかった。住んでいる地域が『危険』だったら1日風呂に入らない選択も考えていいのでは。独り暮らしの人は、温泉なら周囲に誰かいるので安心できる」と話す。 研究グループは12月と1月に鹿児島市の中央保健センターや南部保健センターで市民講座を開く。林教授は「入浴死を1人でも防ぐため、警戒情報を知って役立ててもらえたら」と願う。
南日本新聞 | 鹿児島
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