第93回選抜高校野球 仙台育英、4強届かず 「特別な春」健闘に拍手 /宮城
<センバツ高校野球> 第93回選抜高校野球大会は第9日の29日、仙台育英は準々決勝で天理(奈良)と対戦し、3―10で敗れた。伊藤ら投手陣がつかまり、打線も相手のエース・達を攻略できなかった。東日本大震災から10年の節目に出場校に選ばれるなど、特別な思いで今大会に臨んだナイン。惜しくも20年ぶりの4強進出を逃したが、スタンドからは惜しみない拍手が送られた。【面川美栄、中田敦子】 初回。1回戦に続けて先発した古川が3、4番打者に連続適時打を浴び、2点の先制を許す。スタンドからナインを鼓舞する野球部員の応援団長、高橋号汰さん(3年)は「自分たちは攻撃に自信がある。焦らずに仲間を信じて応援する」とメガホンをたたいた。 試合前に「出し惜しみはしない」と語っていた須江監督は、二回からエース伊藤をマウンドへ送る。伊藤はテンポ良く、相手を3者凡退に抑えて試合の流れを引き戻した。 三回、先頭打者の八巻が内角寄りの速球をしっかりとらえ、大会第7号の本塁打を放つ。反撃の一打に保護者は両手を高く上げ、野球部員たちもガッツポーズをして喜んだ。 応援団のメガホンをたたく音に力がこもる中、さらに1死二、三塁のチャンスをつくると、主将の島貫が犠飛を放つ。好投手・達から2点を奪い、試合を振り出しに戻した。島貫の母いづみさん(46)は、「追いつけて良かった。1点ずつ打っていってほしい」。 しかし、四回に守りのミスが重なって2死満塁から伊藤が連続安打を浴び、4点を勝ち越された。リードする捕手・木村の父敬一さん(49)は「ここから、ここから。やってくれる。大丈夫」と話したが、次第に応援団の表情が険しくなる。 毎回走者を出しながらあと一本が出ず、好機を生かせない。五回と六回にも2点ずつ奪われ、さらに点差が広がった。八回に相手の失策で1点を返したが、反撃はここまで。 今大会は震災10年の節目に開かれ、東北の代表校に対していつもより多くの声援が送られた。「流れは感じていたが、その中で勝ちきれなかったのは悔しい」(須江監督) 試合後、甲子園の土と汗でユニホームを汚した選手たちがスタンドへ一礼すると、健闘をたたえる拍手が鳴りやまなかった。 ◇太鼓に思い込め ○…一塁側アルプススタンドに力強い太鼓の音が鳴り響いた。バチを握るのは、小学校の金管バンドで東北大会に出場したこともある千葉倖生(ゆきたか)さん(3年)=写真。1回戦の前夜、急きょ太鼓役に抜てきされた。本音は「グラウンドで活躍する同級生がうらやましい。自分も応援される側になりたかった」。甲子園で最初に太鼓をたたいた時は悔しさもあった。それでも「メンバーを全力でサポートする」と気持ちを切り替えて臨んだこの日。チャンステーマの「純情(スンジョン)」ではより大きな音でスタンドを盛り上げた。試合には敗れたが、終盤まで粘り強く戦ったナインを見つめ「僕たちの思いが伝わったんだと思います。夏にまた帰ってきたい」と話した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇聖地での本塁打に自信 仙台育英・八巻真也右翼手 2点を追う三回表、ベンチから「振っていけ」と打席に送り出された。チームで練った対策通り、達投手の高めの直球を見送り、低めにきた4球目を強振。「入れ」と念じたボールは、右翼線のポール際に飛び込んだ。練習試合を含めて7本目、公式戦では2本目となるホームラン。「甲子園で打てたのはうれしい」と喜んだ。 昨秋の県大会では背番号19をつけてベンチ入りし、東北大会から先発メンバーに定着。両大会を通じチーム最多の15安打を放ち、打率4割8分4厘、11打点と東北大会連覇に貢献した。 福島県相馬市出身で、小学1年の時に東日本大震災を経験。原発事故の影響もあり、3年になってようやくグラブを手にした。雨が降っても、壁当てや素振りを続けるほどの野球好き。高校時代に捕手だった父裕真さん(43)からもらうアドバイスを、いつも実践していたという。 準々決勝の前日、母裕美さん(44)は「大好きな野球を真也らしく頑張れ」と激励。プロ注目の右腕の直球をとらえた一発に、スタンドで保護者の撮影係を務めていた母も「良かった」とカメラを置いて拍手を送った。 聖地で結果を残して自信を深めたが、チームには課題も見つかった。「残塁がかなり多かった。チャンスで決められるようにしたい」と夏の大会へ向けて決意を新たにしていた。【面川美栄】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽準々決勝 仙台育英 002000010=3 20042200×=10 天理