被爆者認定せずに医療拡充 「体験者」反発、残る格差
国の援護区域外で長崎原爆に遭った全ての「被爆体験者」について、岸田文雄首相は21日、被爆者と同等の医療費助成を年内に始めると発表した。健康状態に応じて手当も支給される被爆者には認定せず、依然として支援に格差が残る。首相は、一部の体験者を被爆者と認定した9日の長崎地裁判決に控訴する方針も表明。原告側は救済策と控訴方針の両方に反発している。 訴訟の原告団は長崎市で記者会見し、国が方針を変えなければ期限の24日までに控訴すると明らかにした。国は救済に当たり放射線の影響を認めておらず、原告団長の岩永千代子さん(88)は「本当に残念。原爆の実相、内部被ばくの検証をしていない」と批判した。 厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ被爆者は、先天性疾患などの例外を除く全ての疾病に関し、医療費の自己負担分が無料。一方、体験者は被爆体験が原因の精神疾患と合併症、7種類のがんでしか助成がなく、申請時と毎年1回の精神科の受診も義務付けられている。
救済策では、医療費助成の対象疾病の制限や受診要件を撤廃する。