韓国大統領、戒厳令を一転解除-野党が弾劾準備で政治混迷の恐れ
(ブルームバーグ): 韓国の尹錫悦大統領は4日、前日夜に宣布した「非常戒厳」を解除すると表明した。国会議員の反対に屈した形だ。宣布を受けて市場に衝撃が走り、世界の指導者の間に驚きが広がっていた。
4日の韓国市場では韓国総合株価指数が下落し、2.3%安となる場面もあった。前日のニューヨーク市場で対ドルで2.9%安を付けた韓国ウォンは一時1.6%上昇と、2カ月強ぶりの大幅高となった。韓国当局は金融・外国為替市場を安定させるためあらゆる可能な措置を取ると表明。韓国銀行(中央銀行)は為替変動に対応し積極的なさまざまな措置を講じるとしている。
韓国のケーブルテレビ、YTNは野党が尹大統領の弾劾動議を4日に提出する可能性があると伝えたほか、TV朝鮮は与党が内閣総辞職を提案する可能性や尹氏に離党を要請する可能性を報じた。
尹大統領はテレビ演説で「国会の要求を受け入れ、閣議で戒厳令を解除する」と述べた。聯合ニュースは閣議で解除が承認されたと報じた。
政治的亀裂が深まる中、尹大統領(63)は3日、政権をまひさせようとする野党の動きを阻止し、自由と憲法秩序を守るとして非常戒厳を宣布。国民や与党を含む国会議員、米国をはじめとする同盟国、投資家を驚かせ、市場の動揺を招いていた。
4日未明、韓国国会(定数300)のうち出席した190人全員が戒厳令の解除に賛成票を投じた。今回の展開で尹大統領の政治的将来は試されることになる。野党は大統領に辞任を求めた。
調査会社TSロンバードのエコノミスト、ローリー・グリーン氏は「尹大統領は弾劾に直面するだろう」とし、恐らく2025年4-6月(第2四半期)の早い時期に大統領選挙が行われ、野党の「共に民主党」が「本命視」されると指摘した。
聯合ニュースによると、尹大統領が非常戒厳を解除すると表明した後、韓国合同参謀本部は非常戒厳で動員されていた部隊が現地時間午前4時22分(日本時間同じ)に撤収したと発表した。北朝鮮に異常な動きは見られなかったという。