車体溶接に世界初技術…ホンダが次世代EV推進、テスラ・BYDなど巻き返す
ホンダは次世代電気自動車(EV)戦略を加速する。2026年から世界市場で投入する新たなEV「0(ゼロ)シリーズ」に搭載予定の次世代技術を公開した。型締め力6000トン級の「メガキャスト」を採用するほか、世界初の溶接技術を導入。最新の知能化技術も搭載する方針だ。米テスラや中国・比亜迪(BYD)などが先行する中、巻き返しを図る。(編集委員・村上毅) 【写真】薄型化、軽量化を実現するメガキャスト用の大型鋳造機 「移動体をゼロから考え直し、厚くて重い従来のEVのイメージを覆す。全く新しいEVシリーズを具現化する」。電動化戦略の技術開発の進展に関する説明会「Honda 0 Tech MTG2024」で、ホンダの三部敏宏社長はこう意気込みを語った。 0シリーズは「Thin、Light、and Wise(薄く、軽く、賢く)」という新たな開発アプローチで、「人車一体の操る喜び」「高い電費性能」など五つの価値を提供する。1月に米ラスベガスで開かれた家電・IT見本市「CES2024」でコンセプトモデルを世界初公開した。 薄型化、軽量化を実現する中核技術の一つがメガキャストだ。バッテリーケースの製造ラインに型締め力6000トン級の大型鋳造機を採用する。アルミニウムダイカストによる一体化で従来60点以上あった構成部品を5点に減らす。加えて摩擦撹拌接合(FSW)技術により、部品点数の大幅な削減やバッテリーの薄型化を図る。一般的なEVと比べて約6%の薄型化を実現する。 車体骨格では複数の異なる素材を溶接できる世界初の「CDC接合技術」を採用。既存設備の追加投資で、軽く高強度な素材の使用範囲を拡張する。引っ張り強度2ギガパスカル(ギガは10億)級のホットスタンプ材を適用した新開発のEV専用プラットフォーム、インバーターを他社比40%小型化した電動駆動装置「eアクスル」を搭載。車体構造の従来比100キログラム軽量化による電費性能向上と衝突安全性能を両立し「操る喜び、軽快な走り、世界トップクラスの電費性能」(三部社長)実現を目指す。 安全・安心でシームレスな人の移動を支援するため、知能化技術にもこだわる。21年に世界で初めて自動運転「レベル3」を実用化した技術を応用した自動運転(AD)/先進運転支援システム(ADAS)技術を採用。ネット経由でソフトウエアを更新する技術「オーバー・ジ・エア(OTA)」で機能更新を進める。独自のソフトウエア定義車両(SDV)により「お客さま一人ひとりに最適な機能・サービスをスピーディーに提供し続ける」(同)方針だ。 ホンダは40年にEVと燃料電池車(FCV)で世界新車販売100%を目標に掲げる。三部社長は「基本戦略は変えない。柔軟性を持った戦略で変化への対応は十分可能」と強調し、0シリーズは実現のカギを握る。 旗艦モデルの「SALOON(サルーン)」は26年に市場投入予定。30年までに小型―中大型モデルで世界7モデルの投入を計画する。今回の説明会で紹介した技術を導入した新モデルを、25年1月開催予定の「CES2025」で公開する予定だ。