【おむすび】制作統括が明かす“孝雄”緒形直人の起用理由「お名前は自然と出てきました」
緒形直人が演じる渡辺孝雄が墓参りに来た亡き娘の親友・歩に冷たい対応
俳優・橋本環奈が、主人公・米田結を演じるNHK連続テレビ小説『おむすび』(月~土曜午前8時)の第41回が25日に放送され、結の姉・歩(仲里依紗)が阪神・淡路大震災震災で亡くなった親友・真紀の父・渡辺孝雄(緒形直人)から厳しい対応を受ける様子が描かれた。孝雄は、娘の墓参りに来た歩にもうここには来ないでくれと言い、墓前に供えようとした花束さえ突き返した。あまりの対応に驚いた視聴者も少なくなかったはず。制作統括の宇佐川隆史氏が取材に応じ、孝雄のキャラクター造形や孝雄という人物に託した役割、さらに緒形の起用理由を明かした。 【写真】「30代とは思えんくらい似合ってる」…仲里依紗が平成ギャルになりきった制服姿 「被災者の方々を取材していると、“その人にしか分からない感情”というものを、ものすごく実感しました。そんな中、孝雄さんのように今でもはっきりと忘れられないという人。一方で少しも思い出したくないから取材をお断りされた方も。その思いは、私たちが想像できる範囲を遥かにこえるものがあると思ったんです。皆さん、取材を拒絶されているわけではなく、むしろ協力的だったのですが、本当の意味で“この感情を理解すること”は難しいと思ったんです。それはまさに、孝雄のように人を拒絶してしまい、何でだろう、何でこういうふうに考えるんだろうと言うくらい……。苦しいお気持ちを持っていることは分かるのですが、『なぜ、ここまで』という孝雄の心情に関しては、そうした取材で感じた“私たちは、被災者の方々の気持ちを全て理解できるわけではない”という実感が多分に反映されています。孝雄が花をつきかえす、その行為自体はシンプルに見えますし、なぜそこまでと疑問に思うかもしれませんが、その中に、人には簡単に理解できない感情もあるところを表現したいという思いがありました」 花束を突き返すシーンのその後についても聞いた。 「何でそこまでやるの、というところで、『普通やらないよね』で止まってしまっては、私たちもダメというか。そこを歩はどう乗り越えるかが今後の焦点となってきます。私たちは、大変な経験や思いをされた方に対してどうするのか。見守っていくのか、それでも分かりたいと思うのか。そっとしておく方がいいということもあると思います。でも、そのようないろんなことを乗り越えて、これからどうしていくのかと。令和の今、災害に対して他人事ではないと、皆さんも感じていると思います。神戸の震災の記憶を残したいという願いと同時に、何をそこから感じて、これからの未来を生きていくのか。その思いをこめています。歩、聖人、そして結が、孝雄とどう向き合っていくのか、この物語を通して皆さんと考えていけたらと思っております。もちろん、孝雄以外にもいろんな人がいて、それぞれの思いがあります。その点に関しても、他の登場人物を通して表現していく予定です」 緒形直人の起用理由も尋ねた。 「孝雄は、理解できないほどの感情を持つ、すごく難しい役。だからこそ、緒形さんのお名前は自然と出てきました。実直さ、そして拒絶も含めた孝雄の性格を、説得力をもってしっかりと表現できるのが緒形さんでした。ちなみに実際の緒形さんは、非常に優しい方。だからこそ表現できる追い込み方があるし、それができる方だと思います。孝雄に対し、なぜここまで拒絶するんだとか、ともすればウソっぽく見える部分を、本当に見えるようにつなぎとめられるのは緒形さん、ということです。私たちは全幅の信頼を置いています」 オファーした際の緒形の反応はどうだったのか。 「大切な役なので、ていねいに演じさせていただきますという趣旨のお返事を頂きました。緒形さんは実は、方言を話す役が初めてだったそうです。だから、どれだけこの作品の趣旨に思いを寄せ、賛同していただけたか。こちらとしても、ただただ敬意、そして感謝という思いです。方言も地元の方が聞いておかしくないようになるまでひたすら練習をされていて、もちろんそれも俳優のお仕事かもしれませんが、本当にすごいなと。孝雄は何でこんなことするの、という部分に説得力を持たせることも含めて、こういう人が実際にいると思ってもらわないといけない。その大きな壁を、まっすぐな思いで越えてくれる、人として尊敬できる方です」
ENCOUNT編集部