万博の建設加速の切り札・簡易パビリオン「タイプX」、移行進まず…協会が約50億円を支出へ
2025年大阪・関西万博で海外パビリオンの建設が遅れている問題を巡り、日本側が建設を代行する簡易型の「タイプX」への移行が想定通りに進まず、日本国際博覧会協会(万博協会)が50億円程度を負担する見通しになっていることがわかった。会場建設費の予備費130億円から捻出する可能性が出ている。27日の理事会で協議される。 【図解】選択しているパビリオンの「タイプ」ごとの国の数
海外パビリオンは元々、参加国が自前で建てる「タイプA」と、万博協会が建物を用意する「タイプB」と「タイプC」の3種類あり、当初は60か国がタイプAでの出展を予定していた。タイプAは、デザイン性が高く特徴的な外観から「万博の華」と呼ばれる。
しかし、資材価格の高騰や人手不足で、参加国の施工業者探しが難航。建設を加速させる切り札として、万博協会が昨年8月に参加国に提案したのが「タイプX」だった。直方体のシンプルなデザインで、現場で組み立てるプレハブ工法などを採用するため、短期間での建設が可能。万博協会が建設を代行し、費用はいったん立て替えることを想定していた。
万博協会は昨秋、各国の契約状況などを踏まえ、タイプXの25棟分の建設資材を先行発注。今年に入り、想定していたほどの移行は見込めないとして9棟の建設に着手したものの、実際に移行を決めたのは20日現在でブラジルなど3か国にとどまる。画一的な外観への抵抗感や、各国でいったん決めた方針を覆すのが簡単ではないことなどが影響しているとみられる。
関係者によると、入居が決まっていない6棟分の建設費を協会が負担する可能性があるほか、建物をタイプCや休憩所に転用するための費用がかかる。余った16棟の建設資材は他の建物にも活用するが、使い切れなかった分はキャンセル料が発生し、計50億円程度の支出が見込まれる。
これとは別に、タイプAで参加予定だったメキシコなど3か国が万博から撤退することに伴い、空き区画の活用にも費用がかかる見通し。
万博の会場建設費は当初想定の1・9倍にあたる最大2350億円を見込み、国と大阪府・大阪市、経済界が3分の1ずつ負担する。このうち工事費は2220億円で、130億円は緊急時のために予備費として確保している。タイプXの費用は、他の費用を圧縮して賄うほか、予備費を充てることも視野に入れる。