祝30歳!山﨑賢人がラブコメ映画を救う“実写化王子”から唯一無二のスタイルを確立するまで
黒王子役が演技のフォーマットを規定
『ストロボ・エッジ』(2015年)が前年に公開されている廣木隆一監督が演出した『オオカミ少女と黒王子』は、ラブコメ漫画を原作とした、いわゆる“きらきら映画”の金字塔的名作であるばかりか、黒王子役の山崎以降、日本映画界の演技フォーマットが規定されたといっても過言ではない。 それ以前の出演作品としては、剛力彩芽と共演した『L・DK』(2014年)で寝床の間に仕切りをもうける『或る夜の出来事』(1934年)へのオマージュ場面があり、同作のクラーク・ゲーブルの佇まいを無意識のうちに取り込んだ山﨑が色っぽさを放っていた。 きらきら映画ではまだ主演クラスではなかった二番手時代の『今日、恋をはじめます』(2012年)でさえ、圧倒的若々しさの中にすでにスター俳優の才能にめぐまれた気概を感じさせた。 2010年のデビュー以来、一貫した山﨑賢人のスタイルは現在でも変わっていない。大ヒットシリーズ『キングダム 大将軍の帰還』(2024年)の番宣で出演した『日曜日の初耳学』(TBS、4月15日放送)では、MCの林修から「日本のトム・クルーズ」と言われたが、これは冗談ではなくて、山﨑賢人イズム、その唯一無二のスタイルが、世界的スターであり続けるトム・クルーズと同系統の不変的スタイルと比較されるまでになった事実を物語っていた。
アンナチュラルな俳優
そうした山﨑賢人フォーマットの演技に対して、これまでメディアは口を揃えて「ナチュラル」だと形容してきた。うん、確かに山﨑の演技は自然体そのもので、ナチュラルだなと感じる。日本一のナチュラル俳優だと新たな異名を付与することもできるかもしれない。 でも、演技がナチュラルというのは実はとても矛盾した言い方なのである。だって演技というのはごっこ遊びの延長みたいなもので、日常レベルで考えると、ナチュラルどころか不自然極まりない行為だから。 だから本来不自然なはずの演技をナチュラルに見せてしまうアンナチュラルな俳優と形容したほうがずっと正しい。このあたりをきちんと精査しておかないと、山﨑賢人の真価は問えない。