三井住友銀行とシティなど米大手4行、「エクエーター原則」離脱:日本では環境団体が緊急抗議も
■5行の離脱には「もしトラ」も影響か
今回の5行離脱の背景には、この1~2年で急速に勢力を増している「反ESG」の圧力もあるとされる。特に共和党の有力候補であるトランプ前大統領やデサンティス・フロリダ州知事が「反ESG」の急先鋒だ。 共和党予備選挙のヤマ場であった「スーパーチューズデー」(3月5日)で圧勝した直後に5行離脱が明らかになっただけに、今後、大統領選の行方とともに反ESGがどう増幅していくのか、警戒する向きもある。
■国際NGO、加盟する邦銀に脱退しないよう求める
国際環境NGO 350.org Japan、気候ネットワークなど5団体は6日、「三井住友銀行のエクエーター原則脱退に関する緊急抗議声明」を出した。 三井住友銀行はエクエーター原則からの離脱を発表した一方で、今も同行サイトでは「エクエーター原則の理念を尊重しつつ、環境社会リスク評価を実施し、評価結果をリスク管理プロセスに反映しております」と記載している。 NGO5団体は声明の中で、「同行がエクエーター原則を今後も遵守するかどうかは明確ではない。同行は、エクエーター原則を適用した事業について、毎年、情報公開を行ってきたが、同行が情報公開を継続するかどうか明らかではない」とした。 さらに、「同行などエクエーター原則加盟金融機関は同原則を必ずしも遵守してきたわけではない。石炭火力発電事業やガス採掘など、多くの事業で甚大な環境・社会・人権への負の影響が確認されてきた」とも声明では伝えている。 三井住友銀行に対してはエクエーター原則への再加盟を、加盟する他の邦銀に対しては、脱退しないことを要求した。
■みずほ銀行の「エクエーター原則への取り組み」
一方、みずほ銀行はエクエーター原則を尊重する姿勢をウェブサイトで公表している。 (ここから引用) みずほ銀行は責任ある投融資等に向けた取り組みの一環として、エクエーター原則を採択しています。エクエーター原則とは、金融機関が大規模な開発や建設を伴うプロジェクトに参加する場合に、当該プロジェクトが自然環境や地域社会に与える影響に十分配慮して実施されることを確認するための枠組みです。 みずほ銀行(旧みずほコーポレート銀行)は、2003年にアジアの金融機関として初めてエクエーター原則を採択しました。 みずほ銀行は、世界10社で組織される運営委員会のメンバーであるアジア・オセアニア地域代表を長年務めてきました。また2014年にはアジアの金融機関で初めてエクエーター原則協会の議長銀行を務めるなど、リーダーシップを発揮しています。 同原則に基づいた環境・社会デューデリジェンスを行うことで、融資先を含めた関係者・事業者への環境・社会リスクに関する理解と対策を促進し、金融機関の投融資に伴う社会的責任として、「資金の流れ」を環境・社会配慮の実現に向けることができると考えています。(引用終わり)
■先住民族の生活を脅かしたダム建設が設立のきっかけ
エクエーター原則設立のきっかけは、1980年代インド中西部のナルマダ川でのダム建設、サルダル・サロバル・プロジェクトだ。 下流地域に電力と灌漑用水を供給するため、上流地域の先住民族20万人以上に十分な補償もなく立ち退かせ、彼らの生活を破壊し、国際的に厳しい批判を浴びた。 脱退した米4行は、脱退した理由について、「プロジェクト関連融資の環境・社会リスク評価に最善を尽くす意思に変わりはない」(シティ)とした。リスク管理の自主的な強化を継続するとコメントした。