演出家・G2さんの新作「月とシネマ2023」が50周年迎えたパルコ劇場で上演。俳優の永作博美さんと語る「劇場、演劇、街」の関係とは? 「渋谷半世紀」~若者の聖地の今~
劇作家、演出家、プロデューサーとして活躍するG2さんの新作「月とシネマ2023」が東京・渋谷のパルコ劇場で上演されている。2021年4月に新しくなったパルコ劇場のオープニング・シリーズを飾るため準備されていた作品だが、コロナ禍のため公演中止に。約2年を経てようやく、パルコ劇場の50周年を祝う作品として上演が実現した。G2さんと、出演する俳優の永作博美さんに、本作に懸ける意気込みや、渋谷の文化を支えてきた同劇場への思いを聞いた。(共同通信=内田朋子) ▽変わりゆく街と劇場 父の死をきっかけに、閉館の危機にある実家の映画館を存続させようと奮闘する主人公の映画プロデューサーを中井貴一さんが演じ、芯が強く行動力のある元妻でフリーライターの役を永作さんが務める。コメディータッチで温かい気持ちにさせてくれる作品だ。 G2さんは「年配のお客さまも来なくなった映画館が、これからどうなっていくのかを提示したかった」と作品の意図を説明する。「この3年間で、老舗のミニシアターが閉館に追い込まれるなど状況は大きく変わり、21年に書いた解決策では追いつかなくなってしまった。希望を示すために新たな要素を加えることになった」という。「自分が生きている時代の空気を芝居の中に取り入れたかった」と、背景に劇場を巡る街の再開発など、現代の社会が抱えるテーマもちりばめた。
「月とシネマ」という不思議な題名は、企画者でもある主演の中井さんが大好きという1970年代の米映画「ペーパー・ムーン」からヒントを得た。詐欺を働きながら旅する男と少女の間にいつしか本物の親子のような感情が芽生えていくストーリーで、人気俳優ライアン・オニールと当時9歳の実の娘テータム・オニールの共演が話題となった名作だ。 そのテーマソング「It’s Only a Paper Moon」(しょせん作り物の月)をモチーフに、この芝居では父と息子、元夫婦、街の開発に関わる関係者らが複雑微妙な人間模様を繰り広げている。 ▽観客に伝えたいこと G2さんと永作さんのパルコ劇場での仕事は2003年の「人間風車」以来、20年ぶり。人の心理の怖さも描いた前作とちがい、今回は殺伐とした気持ちを抱きがちな現代人にエールを送り、笑いもあふれる内容となった。 「永作さんは“人間力”が素晴らしい」と語るG2さん。せりふの言い回しなど、稽古中により良いアイデアを積極的に出してくれたという。