演出家・G2さんの新作「月とシネマ2023」が50周年迎えたパルコ劇場で上演。俳優の永作博美さんと語る「劇場、演劇、街」の関係とは? 「渋谷半世紀」~若者の聖地の今~
永作さんは「ジェットコースター的コメディーなので、ちょっとした語尾の違いでもガラッと変わってしまう。繊細な作業が本当に大事だなあと思う」と、稽古場で演出家や共演者らとのやりとりを深めた。 中井さんとの元夫婦関係をデリケートに描いた場面もある。「2人の信頼関係がどうなっているのか、劇の書き手と演者、そしてお客さまの間で受け止め方は違ってくる。三者三様の思いが劇場内で交錯するような気がする」 幅広い演技力が高い評価を受ける永作さん。本作でコメディエンヌぶりを発揮する役柄は「諦めないキャラクター」だ。「最近の世の中は、子どもに声を大にして『諦めるな』と言える時代ではないかもしれない。それでも、この女性は状況が良くなると信じて、1人で動く行動力がある。その勇気を観客に届けたい」 芝居を通して“真に信じることの尊さ”も伝えることができればと話した。 ▽パルコ劇場と演劇 パルコ劇場の半世紀を飾る今回の舞台について、G2さんは「自分が行きたい劇場で上演できるのがうれしい。この劇場は見に行くという行為自体がすてきな場所。パルコの中がおしゃれなので、演劇人がおしゃれに見えるような雰囲気もある」と笑う。一方で「旧パルコ劇場も、楽屋がすごく狭いところが好きだった。表の舞台のまぶしさとのギャップがたまらなかった。裏側の狭さのおかげで、役者やスタッフが仲良くなりやすい環境が生まれたのでは」
永作さんも「先輩と後輩の役者が同部屋だったりして大変なこともあったと聞く」と振り返る。「パルコ劇場について語る人はたくさんいる。いろんな芝居が上演され、思い出を持つ人が多いからなのだろう。自分自身もさまざまな劇場に行ったが、なじみ深さやあったかさのある劇場は残り続けてほしいと思う」 永作さんにとって演劇とは「限られた、しかも少なくない人数で一体化し、時間を共有するもの。ドラマや映画とは全てのスタンスが大きく違う。一番の違いは発声。声の出し方、舞台上からの芝居の届け方に技術があるのが面白い。舞台だからこそ観客に届けられる要素が間違いなくある」と説明する。 「演技の幅が一番広いのが舞台なのでは? いかようにも変えられる部分、いろいろなアプローチの方法がある。これだけのベテラン俳優が、こんなふうに(演技を)変えてくるのかと驚く日もある。ライブだからこそ発揮される役者のエネルギーを受け取れるのが魅力だと思う」