【子どものいない人生】「なぜ母親にならなくてはいけないの?」少子化対策の“しわ寄せ”に悩む職場の女性たち
● 若い世代で高まっている 「子どもが欲しくない」意識 そもそも少子化問題が深刻化したのは1989年に合計特殊出生率が1.57となったのがきっかけで、「1.57ショック」と言われた。それから30年以上たつが、少子化は進む一方だ。 国立社会保障・人口問題研究所の推計では、日本の人口は2056年に初めて1億人を割り込むことが予測されている。なお、出生率の低下は日本だけではなく、韓国(0.81)、香港(0.77)など東アジアでも共通の課題だ。韓国の超少子化の原因は、子育て世帯の経済的不安、未婚・晩婚化、若い世代の高い失業率などが絡んでいるとされる。 少子化は深刻だ。ただ、かつては標準とされていた「大人になったら結婚して子どもを持ち、家庭を築く」生き方を選ばずに人生を歩みたい、という価値観を持つ女性たちが増えていることは知っておくべきだろう。また、子どもがいないことをネガティブに捉えるばかりの世の中ではなくなってきている。 厚生労働省によると、23年の婚姻数は戦後初めて50万組を割り、前年から約3万組減少した。日本では結婚と出産とが緊密に結び付いているため、婚姻数の減少は直接出生数に影響する。 さらに、若い世代で「子どもが欲しくない」という意識が高まっているという調査もある。 18歳から25歳の全国未婚男女457人を対象にしたインターネット調査(「子育てに関するZ世代の意識調査」BIGLOBE、2023)では「将来、子どもがほしくない」人は45.7%(うち、「将来結婚はしたいが子どもはほしくない」9.6%、「将来結婚もしたくないし、子どももほしくない」36.1%の合計」)とほぼ半数を占めた。 その理由として「お金の問題」の他、「育てる自信がないから」「子どもが好きではない、子どもが苦手だから」「自由がなくなるから」が上位であった。
● 2050年には 3人に1人が「母親ではない」 世界から眺めてみると、わが国はOECD(経済協力開発機構)加盟国の中で最も「子どもを持たない人の割合が多く、かつ短期間でその割合が増えた」特徴的な国であることが見て取れる。 24年に49歳を迎える女性の「生涯無子率」は、日本が28.3%で加盟国中トップだというデータもある(図2)。この調査では、1975年生まれと、20年前の1955年生まれ、さらに20年前の1935年生まれとの比較もされているが、20年前、40年前よりも子を持たない人の数は2倍以上増えていることが分かる。 図2 日本は子どもを持たない人の割合が世界でトップ 2024年に49歳を迎える女性の生涯無子率を比較したデータ。OECD加盟国の中で生涯無子率が最も高かったのは日本で、28.3%。次いで割合が高かったのがスペイン(23.9%)、イタリア(22.5%)だった。 出所:Society at a Glance2024 OECD SOCIAL INDICATORS 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(平成29年推計)」では「2000年生まれの女性が50歳になった時の無子割合は31.6%に達する」と言及されている。推計とはいえ、25年先には、3人に1人が「母親ではない」時代が来る可能性が濃厚だ。