コメ不足で値上げ&店頭では購入制限も!’30年代には最悪なシナリオも…「米が自給できなくなる日」
業界団体から発表された’30年代の「現実的シナリオ」は、「最悪の予想図」
そんな異変が起きているコメについて、ある深刻な問題が提起されている。日本の食料安全保障が危ぶまれるかもしれないというのだ。 「最悪の予想図である『現実的シナリオ』で、’30年代に国内需要量を国産だけではまかないきれなくなる可能性」があると、全国米穀販売事業共済協同組合が今年3月の『米穀流通2040ビジョン』で示した。 その現実的シナリオによると、’40年のコメの国内需要量375万トンに対し、生産量が363万トンにとどまり、生産者は20年比で65%減の30万人程度になる見通しという。 国内でコメを生産する農家は高齢化が進んでいるうえに、後継者がいないという問題を抱えている。そこにはコメに特有のさまざまな事情があるようだ。 農林中金総合研究所の平澤明彦理事研究員は、 「コメで稼げるなら、コメ農家は自分の家で継がせます。若い人がやる農業は、もうかる野菜です。いま稲作をしている人が大幅に少なくなるのは間違いなく、その後を誰にやってもらうかです」 と問題提起する。 コメの生産には水が必要なほか、手間がかかり、コストが高くつくと、平澤さんは言う。田んぼには水利の設備が必要になり、水漏れを防ぐ土手づくりや田んぼの底固めのほか、栽培中に水量の管理もしないといけない。田んぼへの対応だけでなく、苗づくりや田植えの作業もある。一方、「野菜はあまり土地を使わない」と話し、限られた土地に種をまき、水やりなどをすればいいとも。 ◆日本の農家の経営面積は2~3haに対し、米国は200~300ha…さらに分散される傾向も 平澤さんは「世界の農業競争力は土地の面積で決まる」と指摘する。米国や豪州などは広大な土地に大型機械や飛行機なども導入して、人の手間がかからない農業をしており、安く生産している。農家の経営面積は、日本が平均して2~3haに対し、欧州は20~30ha、米国が200~300ha、豪州の小麦栽培では数千haもあるという。 日本では山の斜面に「棚田」や「段々畑」もあるなど、狭くて細切れの農地を寄せ集めて利用することが少なくない。そこでコメなどの穀物を生産しても、経営効率で欧米に太刀打ちができない。 さらに日本では、農家の相続で農地が分散されていくことが、特に西日本で強い傾向があるともいう。 「東日本では土地の相続を長男に集める傾向がありますが、西日本では、できるだけ平等に相続させようと、土地をみんなで分けてしまう傾向があります」(農林中金総合研究所・平澤明彦理事研究員、以下同) つまり、より農業経営を弱体化させるような問題を日本の農家が抱えているのだ。