政府が大金をつぎ込んでも成功しない「人型ロボット」 知られざる「デジタル赤字」がもたらす絶望的な未来 古賀茂明
■米国に劣る、”日本産生成AI” しかし、日本では、米国に比べて生成AIを利用できる環境が極めて劣っている。 そこで、政府は、米国のTechジャイアントの生成AIデータセンターを国内に誘致したり、海外にあるデータセンターの利用枠を確保して日本企業に提供したりしているが、焼け石に水の状態だ。新たなデータセンターの建設には時間もかかる。 また、これら海外企業のデータセンターを利用すれば利用するほど外国企業への支払いが増えて、デジタル赤字が深刻化する。 政府は、日本企業による生成AI用データセンター建設にも補助金を出しているが、そもそも大量の最先端半導体が確保できないため、箱物建設ばかりで中が空っぽの状態が続いている。さらに、仮にこれらの計画がうまく行っても需要の急拡大のスピードには到底追いつけない。 生成AI用データセンターを自前で整備するには、大量の最先端半導体が必要だが、日本にそれをつくれる企業が存在しない。 そこで、2ナノレベルの最先端半導体を27年から量産するという触れ込みで作られたラピダス社には1兆円近い補助金が確保され、総額5兆円(さらに膨らむことは確実)と言われる資金を調達するために、政府が債務保証をするというアイデアまで出ている。 しかし、民間企業からの出資は全く増えず、わずか73億円しか集まっていない。関連企業のほとんどが失敗すると見ているのだ。 先週、経産省の官僚OB2人と食事をする機会があったが、悲しいことに、この計画は絶対に失敗するということで一致した。 半導体・生成AIと人型ロボット両方の市場で出遅れた日本は、追いつこうにも、そもそも必要な計算リソースを確保することが難しいので、今後は、半導体やロボットの部品や材料を生産することでしか儲けることができなくなるだろう。 新たな産業のヒエラルキーで最下層から中間層に押し込められることを避けるには、少なくとも米エヌビディア社のように最先端半導体の設計開発をできるようにならなければならない。 ラピダスは最先端半導体の製造を手がけることになっているが、台湾や米国の後追いをするだけでは、追いつこうとしている間に相手の方が速く先に行ってしまうので、絶対に追いつけないのは明らかだ。