政府が大金をつぎ込んでも成功しない「人型ロボット」 知られざる「デジタル赤字」がもたらす絶望的な未来 古賀茂明
経済産業省が2022年7月に発表した「次世代の情報処理基盤の構築に向けて」というレポートがある。 (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semicon_digital/3siryou.pdf) 【写真】「喜びの舞い」が話題になったEVメーカーCEOはこの人 その資料の6ページを見ると、情報処理の基盤は、2000年代まではメインフレームが中心で、01年のメインフレーム市場でのシェアは、日本が38.6%で首位、米国23.1%、西欧27.3%だったことがわかる。 その後、情報処理においてクラウドサービスが中心的な役割を占めるようになると、この市場では、20年に米国が60.2%のシェアを取り他を圧倒している。欧州21.9%、中国5.5%と続くが、日本はわずかに2.6%で、メインフレーム時代のシェアに比べて1/15。ほとんど存在感がないばかりか、追いつくすべが見つからない状況だ。 このまま放置すれば、当面の情報処理ビジネスの利益を失うだけでなく、将来にわたってこの分野での技術的な知見も失うことになると経産省のレポートは警告している。 こうした状況を反映して、日本企業や個人がGAFAMなどの米IT企業に支払う金額は急増している。この分野での収支はもちろん大幅な赤字で、これが急激に増えることは確実だ。これが今、「デジタル赤字」の問題としてクローズアップされるようになっている。
■ デジタル赤字5.5兆円の絶望的な未来 経産省の前述のレポート7ページによれば、30年のデジタル赤字は年間約8兆円まで拡大するとされていた。この予測は22年7月発表のものなので、ChatGPTが火をつけた生成AIフィーバーを反映していなかった。 そのため、経産省の予測は1年目から大外れとなってしまった。23年では、デジタル赤字が約2兆円と予測されていたのに実際には、2倍以上の5.5兆円に達したのだ。1年で2倍超も外れてしまうのだから、これが続けば、30年の赤字は100兆円単位になっても全く不思議ではない。少なくみても20兆~30兆円になる可能性が高いと考えておくべきだろう。 日本の化石燃料の輸入額は約26兆円(23年度)だが、それを上回る赤字が発生し、国富の流出が止まらなくなるという深刻な状況に至るのだ。 これだけ考えても大変だなと感じるのだが、この先には、実はもっと大きな赤字要因が加わる可能性が指摘されている。 以下、スパコンや半導体分野で最先端を行くPEZY社の創業者である齊藤元章氏から聞いた話を私なりに解釈して紹介することにしよう。まずは、人型ロボット(Humanoid Robot)の話だ。 人型ロボットの世界では、SONYの「AIBO」やホンダの「ASIMO」などが一世を風靡した時代もあったが、今や見る影もない。 百聞は一見にしかずなので、このTHEAI GRIDが提供する動画「Top 10 NEW Humanoid Robots For 2024 (Tesla, Figure 01, Agility, Boston Dynamics and More)」を見てから以下の話を読んでいただきたい。 (今やこのような動画はネット上に溢れているが、日本のメディアでは詳しく報じられることは少ないようだ)