会社から「定時退社しろ」と言われますが、仕事は多いままです。結局「持ち帰り残業」になっているのですが「残業代」は払ってもらえるでしょうか?
働き方改革によって、定時退社の推進を行う企業は増えてきました。これは本来喜ばしいことではあるものの、別の問題もはらんでいます。そのひとつが持ち帰り残業です。 仮に定時退社をしたとしても、仕事の量が前と変わらなければ、どこかで調整をしなくてはいけません。業務内容や進め方の改善での解決がなされず、持ち帰り残業が常態化していた場合の残業代の扱いについて、本記事で解説します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
基本的に残業代は発生しないが
結論からいうと、持ち帰り残業の場合、基本的に残業代は発生しません。そもそも、労働時間とは「使用者の指揮命令下にある時間」を指します。自宅で自主的に持ち帰り残業をしていた場合は、使用者の指揮命令下にある時間とはいえないため、労働時間にあたりません。 ■一定の場合は残業に当たる ただし、持ち帰り残業であったとしても、以下の条件に当てはまる場合は労働時間に該当し、残業代が支払われる可能性があります。 ●上司から持ち帰り残業をするよう指示されていた ●持ち帰り残業をしないと期限までに終わらない仕事があり、それを上司も認識していた ●「担当業務の納期に遅れたら降格させる」など人事上の不利益があった ■病気や万が一の場合は損害賠償が生じることも 既に触れたように、持ち帰り残業は一定の条件を満たさないと残業とはみなされません。しかし、長時間働くことは事実なので、肉体的・精神的にもかなりのストレスが生じます。うつ病や心筋梗塞などの病気になったり、過労死として万が一のことが起きてしまったりした場合は、会社が損害賠償責任を負う可能性があるでしょう。 ■持ち帰り残業をしている人は一定数いる ここで実際のところ、どれだけの人が持ち帰り残業をしているのか、アンケートデータで確認してみましょう。2017年のデータですが、連合系のシンクタンク・連合総合生活開発研究所の調査によれば、勤務時間内に業務が終わらず、自宅や飲食店などへの持ち帰り残業をしたことがある人は、回答者の約3割に上りました。 ■持ち帰り残業とジタハラ 関連する言葉として、ジタハラについて紹介します。ジタハラとは「時短ハラスメント」の略で、会社の上層部が現場の声を無視し「残業しないで定時で帰宅するように」「週に1日はノー残業デー」などと定時退社を強いることを指す造語です。2018年にユーキャンの新語・流行語大賞にもノミネートされました。いわば、持ち帰り残業はジタハラによる副産物といえます。