発達障害やうつ病と間違いやすい…「自分はダメ人間だ」と悩んでいる人の"意外な診断結果"
■先天的な「気質」と後天的な「性格」は別 私たち精神科医は、生まれ持った「気質」と、生まれ育った環境で形成される「性格」を分けて考えています。そして、環境により出来上がった後天的な「性格」は想像以上に現在の言動に表れます。 極端に打たれ弱い、怒りっぽい、情緒不安定、集中力がない……など、生まれ持った気質だと思っていたものも過去の経験によって出来上がった性格かもしれません。それがトラウマによって作り上げられたもので、日常生活に困難をきたしているのであれば症状として診断されます。 2018年には、慢性的なトラウマ体験を原因とする疾病「複雑性PTSD」が、世界保健機関(WHO)の定める疾病分類「ICD-11」に登録されました。複雑性PTSDには厳密な診断基準がありますが、たとえその基準すべてを満たしていなくても、現在の症状が過去のトラウマ体験が原因となっているのであれば、適切な治療やアプローチによって状況をよくしていくことができます。 過去は変えることはできません。しかし、トラウマを過去の亡霊として終わらせ、辛かった体験が今後の自分の人生に影響しないようにすることは可能なのです。 ---------- 生野 信弘(いくの・のぶひろ) 精神科専門医・指導医 1988年長崎大学医学部卒業、1995年同大学院修了。医学博士。同大学卒業後、長崎大学第二内科、佐世保市立総合病院で内科医長を務め、1998年にオーストラリア・モナッシュ大学の生化学&分子生物学科に2年間留学。帰国後、離島医療やホスピス緩和ケアに従事。2001年に精神科に転向し、その後、対人関係療法などを学び、現在は田町三田こころみクリニックで、対人関係療法とともに「発達性トラウマ障害」や「複雑性PTSD」などトラウマ疾患の診断と治療も行っている。著書に『トラウマからの回復』(扶桑社)がある。 ----------
精神科専門医・指導医 生野 信弘