<上海だより>滴水湖(1)最果ての人口湖 観光地として完成するのか
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上海の東側に位置する浦東地区の東部は今でも農村が広がっていますが、最近ではIT特区の開発や上海ディズニーランドのオープンなど、広大な土地の再開発が進んでいます。上海ディズニーランドも浦東空港付近に位置しておりかなり東部にありますが、そこからさらに南東へ約50キロメートル離れた上海市の最東端に数年前に開発された滴水湖があります。
滴水湖は直径約2.6キロメートルの円形の人口湖で、ドイツ大手設計事務所のGMPが企画・設計を手がけ、2003年には基礎部分が完成しました。湖の周辺で、バーベキュー施設やヨットなどのマリンスポーツも楽しむことができ、日の出を満喫できる大型のクラウンプラザホテルもあります。道沿いの植物も中心部とは異なり南国風の樹木が植えられ、綺麗な道も多いため全体的な印象としてはとても快適です。 しかし、開発投資額は5億元程度と少なく、340億元かけて開発された上海ディズニーランドと比べると歴然の差があります。基礎部分の完成から10年以上が経つ現在も、未だ完成とは言えない状態で放置されており、全体の綺麗さに対して人が少なく寂しい空気も漂っています。
実際、上海に住む人にとっての滴水湖の印象は特に魅力的な場所ではなく、友人同士でレジャーに行こうと話題にもならないようです。その理由としては、非常に遠いという点が挙げられます。上海中心部から車で1時間以上かかる距離であり、浦東の龍陽路駅から地下鉄16号線に乗ったとしても約1時間強かかってしまうという、アクセスの悪さが影響していると言えます。また、現地の様子としても、開発途中で資金が尽きてしまったのか、非常に中途半端なレジャースポット感が拭えません。
一方で、夏場のプールや、連休中の人気スポットに行けば想像を絶する人の数で埋め尽くされ、せっかくのレジャーも楽しめない中国の傾向を考えると、この人の少なさはある意味で好都合とも考えられます。芝生にテントを張り、決して透明度は高くないですが、湖を眺めながら風に吹かれて週末を過ごすなど、リラックスした雰囲気を味わうことはできるでしょう。 バーベキュー施設を見ても、日本であれば晴れた初夏の週末には人で埋め尽くされそうなものですが、滴水湖では特に予約をすることもなく、快適にバーベキューを楽しめますし、広場では海風でカイトを上げることもできます。
香港などと比べると、どうしても週末レジャーが欠けている印象を拭えない上海ですが、サービス消費の高まりが顕著になりつつある今の中国人消費者にとって、上海ディズニーランドのような娯楽が増えることで都市全体がより活性化していくはずです。滴水湖も、基本設計上は非常に快適に作られていますので、周辺のハード面を改めて整備するとともに、魅力的なアウトドア・レジャーも増やすなどソフト面も充実させれば、きっと上海を代表する観光地として成長するでしょう。