じつは「日本の15歳」は世界でもトップクラスに「数学ができる」のに、なぜか「数学に自信がない」…最新のPISAの結果から見えてきた意外な実態
読解リテラシーと科学的リテラシー
話を戻す。続いて「読解リテラシー」は、日本の得点は全参加国・地域中3位。統計的に考えられる順位では参加国全体で2位から11位の間、OECD加盟国中では1位から6位の間だ。 日本は2018年から2022年で見るとレベル2未満の生徒の割合が統計的に有意に減少した。しかし2012年から2022年の変化を見るとレベル2未満の生徒の割合は増加し、レベル5以上の割合は減少している。OECD平均では2022年の平均得点は2018年から10~11ポイント低くなったが、日本は得点が12ポイント高くなっている。 出題形式別に見ると「選択肢」71.9%、「複合的選択肢」57.3%、「求答」64.7%、「自由記述」56.3%。 「科学的リテラシー」の平均得点は全参加国中では日本はシンガポールに次いで2位、統計的に考えられる順位は2位~5位の間であり、OECD加盟国の中では標準誤差を考慮しても1位だ。 2018年から2022年の変化を見ると日本はレベル2未満の生徒の割合が統計的に有意に減少し、レベル5以上の割合が増加。2012年から2022年の間の変化を見ると統計的な有意差はない。また、日本は2022年に2018年と比べて17ポイント得点が高くなった一方で、OECD平均は2~3ポイント低くなっている。 出題形式別に平均正答率を見ると「選択肢」70.0%、「複合的選択肢」63.2%、「求答」65.4%、「自由記述」48.2%とやはり自由記述が低い。無答率の割合が高い問題はいずれも自由記述だった。 大学入試に記述式を導入しようと文科省が動いてはメディアや教育関係者にぶっ叩かれているが、PISAでは以前から日本の子どもが記述式が不得手であることがわかっており、カリキュラムや入試制度改革の背景のひとつにこの課題があることはもう少し知られてもいい。
学校に対しては国際的に見ても高評価だが、自分の能力に関しては自信がない
PISAでは毎回アンケートも実施しているが、これも興味深い。たとえば数学の授業における教師の支援に関するアンケートに対する肯定的な回答の割合を見ると 「先生は、生徒ひとりひとりの学習に関心を持っている」日本74.3%、OECD平均63.3% 「生徒が助けてほしいときは、先生は助けてくれる」日本83.6%、OECD平均70.2% 「先生は、生徒の学習を助けてくれる」日本85.3%、OECD平均71.7% 「先生は、生徒がわかるまで何度でも教えてくれる」日本78.8%、OECD平均63.6% と教師への評価が高い。 また、生徒の学校への所属感に関するアンケート調査では、日本は平均値ではOECD加盟国中6番目に値が大きかった。つまり肯定的な反応が多かった。 「学校ではよそ者だ(またはのけ者にされている)と感じる」「学校ではすぐに友達ができる」「学校の一員だと感じている」「学校は気後れして居心地が悪い」「他の生徒たちは私をよく思ってくれている」「学校にいると、さみしい」のどの項目でも、日本は他国より学校への所属感がポジティブな回答の割合が多い。経年比較で見ても、より肯定的な評価の割合が増えている傾向にある。 ところが「次のような数学の問題を解くことにどのくらい自信がありますか」と数学の課題に対する自己効力感に関する9つの項目について「とても自信がある」「自信がある」「自信がない」「全然自信がない」から選んでもらうと、日本はOECD平均を下回っており、自信がない生徒が多い。 実際には国際的にはトップクラスの成績なのに、である。子どもたちが教師や学校を評価するだけでなく、自分自身を肯定的に捉えるような教育をした方がいいのではないだろうか。