凍結状態の電子投票、国内8年ぶりの実施目指す自治体も
10月27日に投開票された衆院選では全国の選挙管理委員会でミスが相次いだ。選挙に従事する職員の負担軽減やミス防止の方策の一つとして、投票所でパソコンやタブレット端末を使って投票する「電子投票」がある。電子投票は国内では実施例もあるが、機器トラブルの前例などもあり現時点で事実上凍結状態にある。しかし近年、技術の進歩に加え、働き方改革や業務効率化が求められる中で、新たに導入にかじを切る自治体も出てきた。 電子投票は、開票作業の迅速化や正確性の向上、書き間違いによる無効票を防ごうと平成14年に特例法が施行され、地方選での実施が可能となった。同年の岡山県新見市長選、市議選をはじめ、これまでに10自治体が各種選挙を行ってきた。 しかし、15年の岐阜県可児(かに)市議選で、サーバーの不具合の影響で1時間以上投票できず、結果的に同市議選の無効が最高裁で確定し、再選挙となったことや機器を提供していた事業者が撤退したことなどから、自治体が導入に及び腰に。総務省によると、最後に電子投票が行われたのは28年1月の青森県六戸(ろくのへ)町議補選となる。 そんな中で、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進を掲げている大阪府四條畷市は今年7月、府内の自治体としては初めて、市長選と市議選で電子投票を導入する条例案を市議会で可決した。現在、事業者とシステムの詳細を詰めているが、12月に予定される市長選での実施が実現すれば国内では8年ぶりの電子投票となる。 市選挙管理委員会の担当者は「今は市長選、市議選のみだが、国政選挙でも実施できるよう今年2月に総務省へ要望した」と話す。機器を扱う事業者の撤退についての不安の声もあるが、「8年ぶりの電子投票となれば、同様の条例を凍結している自治体や電子投票の導入を検討している自治体の後押しとなり、実施例が増えることも期待できる。事業者も安定的に機器を提供でき、継続的な確保にもつながるのでは」と期待する。 ■「電子投票、海外では導入進む」 同志社大・武蔵勝宏教授(議会制度論)