楽天の若きエース・早川隆久が覚醒の予感!高校1年の打撃投手から始まったプロ入りへの道【主筆・河嶋宗一コラム『グラカンvol.15』】
だが、早川のボールを空振りしてしまうのには、きちんとした理由がありました。 「バッターがタイミングを取りづらいんですよね。ちょっと腕が遅れて出てくるところがあって、ステップした後、普通の投手だったらもうボールを投げているタイミングでも、早川はまだボールを持っていてリリースしていない。だから、打席に立った昨年の3年生はみんな口を揃えて『打ちづらい、打ちづらい』と言っていました」(五島監督) 腕が遅れて出てくる投球フォームについては、本人はこう語っていました。 「自分としてはテイクバックを小さくとることを意識しているだけで、別に腕を遅らせている訳ではないんです。自分が大事にするのは体重移動。股関節にうまく体重が乗るように意識して投げると、最初は軸足に、最後のフィニッシュではステップした足の方にしっかりと体重が乗るんです。逆に股関節にちゃんと乗っていないとフィニッシュがバラバラになってボールにもバラつきが出てしまうので、ブルペンでも確認しながら投げています」 この投球フォームで早川投手は1年秋、36イニングを投げて無失点。3試合連続の完封を成し遂げるなど、まさに衝撃的なデビューを飾りました。高校では3年のセンバツで、大阪桐蔭を破りました。準々決勝の秀岳館戦では完封寸前から逆転されてしまいましたが、それまで強打を発揮していた秀岳館打線を完璧に抑えたことでより評価を高めました。そして夏の甲子園でも唐津商、広島新庄に完封勝利を挙げ、ベスト8進出。高校生を代表する左腕にふさわしい実績を残しました。
大学では4年秋にキャリアハイ。プロでも年々、数字を挙げる活躍を!
甲子園後、高校日本代表に選ばれた早川投手。高卒プロ入りするのか迷っていたそうですが、今井 達也投手(作新学院-西武)、藤平 尚真投手(横浜-楽天)など高卒プロ入りした投手たちの実力を比較した結果、まだ早いと実感し、早稲田大進学を決断します。
しかし大学前半はなかなか数字が挙げられません。1年春は防御率5.12、1年秋は防御率6.00、2年春は防御率4.80と苦しい内容が続きます。その中でも早川投手は打たれにくく、より強いストレートを投げるため、トレーニング内容にこだわりました。 3年冬に早川投手を取材した日のトレーニングは、片足ジャンプ、メディシンボール投げなどファンクショナルトレーニングが中心でした。このトレーニングの意味について早川投手はこう話していました。 「がっつりウエイトするわけではなく、ファンクショナルトレーニングをすることによって、体の使い方、連動性が出てくるので、そういう面では今日行っているトレーニングは重要だと思っています。高校の時はただメニューをこなしていて、体を大きくしたい目的でやっていたと思います。自分の目的としてはこのトレーニングはどういう意図が体を動かしているのか、上半身と下半身が連動して、投球動作に生かせるのかを考えて練習しはじめましたね」