「まさかこんなヒット曲まで!」 音楽出版社・テレビ東京ミュージックが公式プレイリストを展開する理由
音楽出版社・テレビ東京ミュージックが、テレビ東京の看板アニメや独自コンテンツの音楽を、「テレ東」のくくりで集めた4つの公式プレイリストを12月25日からApple Music、Spotify、Amazon Musicで展開する。音楽出版社が公式プレイリストを展開する目的を聞いた。 【画像】BTS、TXT、あいみょんの旧譜も収録 「テレ東ドラマ」プレイリスト テレビ東京ミュージックでは“最強のアニソン”「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)、「めざせポケモンマスター」(松本梨香)をはじめ、誰もが知るビッグタイトルの著作権を多数管理している。しかし一般的に、音楽出版社が管理している楽曲であることは認知されづらい。 プレイリスト作成のきっかけについて、同社のクリエイティブディレクター・日下裕香子氏(制作管理本部 制作部)は「今年1月1日から宣伝ルームができ、著作権をお預かりしている楽曲や、レコード会社・事務所と一緒に組んで原盤制作したアーティストの楽曲をどんどん世に出していく働きかけをもっと積極的にしていこうとなり、その一環として始めました」。 音楽出版社が表立ってプロモーションする難しさを打ち明けつつも「『この曲もテレビ東京ミュージックが持っているんだ!』『まさかこんなヒット曲まで!』『この曲TikTokで流行ってるよね!』と、少しでも多くの人に知っていただく入口になれば」と期待を込める。 Apple Music、Spotify、Amazon Musicで展開されるプレイリストは、テレビ東京で放送中の作品のオープニング/エンディングテーマや、往年のヒット曲を集めた『テレ東アニメ』『テレ東ドラマ』、0~2歳児向け番組『シナぷしゅ』(月~金 朝7:30~8:00)の月替わりのオリジナルソング「つきうた」を集めた『シナぷしゅ』、原盤制作を手がけているアーティストやプロモーション協力をしているアーティストのヒット曲、最新曲などを集めた『PUSH!PUSH!PUSH!』の4つ。 楽曲セレクトは、『テレ東アニメ』『テレ東ドラマ』『PUSH!PUSH!PUSH!』は宣伝ルームの日下氏、南悠太郎氏、櫻井空斗氏の3人、『シナぷしゅ』は竹内優希氏(いずれも制作管理部 制作部)が担当している。 ■『テレ東アニメ』は誰もが知るビッグタイトル多数 『テレ東アニメ』のプレイリストは、50曲以上で構成される。選曲を担当した南氏は「アニメは影響力が高く、海外でのアニメ人気もあり、ビッグヒット曲が多いのが特徴です。誰もが知る『新世紀エヴァンゲリオン』のOP曲「残酷な天使のテーゼ」(高橋洋子)、『ポケットモンスター』OPテーマ「めざせポケモンマスター」(松本梨香)から、近年大ヒットした『SPY×FAMILY』Season 1第1クールOPテーマ「ミックスナッツ」(Official髭男dism)、EDテーマ「喜劇」(星野源)、同Season 2 OPテーマ「クラクラ」(Ado)など、ビッグタイトルのアニメの新旧テーマ曲が入り混じっているのが推しポイントです」と言葉に力を込める。 最近ではK-POPのテーマ曲も増え、IVE「Will」(『ポケットモンスター』OPテーマ)、TREASURE「Here I Stand」(『劇場版 ブラッククローバー 魔法帝の剣』主題歌)もプレイリスト入り。「いわゆるアニソンアーティストではないK-POPアーティストやバンドの楽曲も多くなってきているので、好きなアーティストをきっかけにしてテレ東のアニソンを聴いてもらえる入口になればと思い、いろいろミックスして選曲しました」と解説する。 ■『テレ東ドラマ』にはBTS、TXTの楽曲も 『テレ東ドラマ』は、テレビ東京で放送中、もしくは放送されたドラマ関連作品で構成されている。選曲は、アニソンとテレ東のアニメ好きが高じてテレ東ミュージック入社を志したという櫻井氏が担当する。 「まず直近の10月クールのドラマ主題歌などの旬の楽曲は入れつつ、往年の楽曲も入れているプレイリストとなっています。『ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!』(2024年9月~11月放送)のオープニングテーマ、syudouさんの「あいきるゆぅ」が作品の世界観にマッチしていて、個人的な推し曲です」とプッシュ。 「あとは、2021年10月期ドラマ『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』の主題歌だったBTSの『Stay Gold』。オープニングテーマだったTOMORROW X TOGETHERの『Ito』、SUPER BEAVERの人気曲で2016年4月期『その「おこだわり」、私にもくれよ!! 』オープニングテーマの『人として』など、幅広いアーティストさんとご一緒させていただいているので、K-POP、バンド、アイドルなどバラエティー豊かで聴いていて飽きないランナップになっていると思います』とアピールする。 このほか、あいみょんのメジャーデビューシングルで2016年10月期ドラマ『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』オープニングテーマ「生きていたんだよな」、Official髭男dismが2018年に発表した同年7月期ドラマ『グッド・バイ』主題歌の「バッドフォーミー」などの旧譜も魅力的だ。 ■泣く子も泣き止む『シナぷしゅ』 民放初の0~2歳児向け番組『シナぷしゅ』の月替わりのオリジナルソング「つきうた」を中心に集めた、乳幼児と子育て中のファミリー向けプレイリスト。「つきうた」は書き下ろしのオリジナルソングで、歌とともに放送/配信されるアニメーションも描き下ろし。プレイリストはテレビ東京ミュージックで音楽の制作・コーディネートを手がけた「つきうた」を中心に構成されている。 選曲を担当した竹内氏は「視聴者さんからは『シナぷしゅの曲を聴くと絶対に赤ちゃんが泣き止みます』というお声をたくさんいただいていて、ファンの方に作っていただいている『シナぷしゅ』のプレイリストもあるほどです。今回、公式で配信するにあたっては、メインキャラクター“ぷしゅぷしゅ”のジャケット写真を作って配信をしています」と説明。 竹内氏の推し曲は、11月の「つきうた」、プッシュプルポットの「プルシュルポット」。「もともとすさまじい勢いとエネルギッシュさが持ち味のプッシュプルポットですが、今回はバンドサウンドも活かしつつ、赤ちゃん向けの優しい楽曲を作っていただきました。子育て世代のみならず、いろんな層の方々に受けています」と喜ぶ。「プッシュプルポットのファンを『シナぷしゅ』に誘導できたり、『シナぷしゅ』ファンの方々がプッシュプルポットに興味を持っていただいたりと、いろんな相乗効果が生まれたいい作品になりました」と手応えをにじませている。 日下氏の推し曲は、4月のつきうたを担当したMONO NO AWARE(モノノアワレ)の「もうけもん」。「幼児の耳に残るような楽曲で、曲を聴かせると本当に赤ちゃんが泣き止むんです。『シナぷしゅ』のプレイリストはそういう曲を集めていますので、赤ちゃんが泣き止まないときにぜひ、流していただければ。周りにママになった友達が増えてきて、『シナぷしゅ』を観ていると言ってくれるので、イチオシしたいプレイリストです」と息巻く。 ■推し曲で構成する『PUSH!PUSH!PUSH!』 テレビ東京ミュージックで原盤制作をしているアーティストの最新曲を中心に、文字どおり『PUSH!PUSH!PUSH!』する楽曲で構成。11月1日に4年ぶりのフルアルバムをリリースしたCzecho No Republicの「Psychedelic Night」で始まり、MAN WITH A MISSION「FLY AGAIN」で締めくくられる。 このプレイリストの楽曲セレクトは、宣伝ルームの3人を中心に、「社内にも音楽好きがたくさんいるので、『この楽曲も入れてほしい』という要望を採り入れたり」しながら行われているという。「楽曲の入れ替えもしていきたいと思っていて、『テレ東アニメ』や『テレ東ドラマ』は1クールごとに刷新していけたら。現在展開しているのは今クールのものが中心ですが、来クールはまた異なるラインナップにしていきたいと思っています」(日下氏)と話す。 ■今後はアニメBGMのプレイリスト化も視野に 将来的には、アニメBGMのプレイリスト展開も視野に入れている。「例えば『NARUTO』をはじめ人気アニメのBGMもお預かりしていますので、BGMに特化したプレイリストも作っていきたいなと思っています。なかなかBGMに特化したプロモーションは難しいので、公式プレイリスト化することで、テレビ東京ミュージックがかかわっていることを打ち出していければ」(日下氏) ライツ部門の管理部は、旧譜にCMなどのタイアップをつける動きもしているという。こうしたプレイリスト展開を通じて「これってテレビ東京ミュージックが持ってるんだ。じゃあ、テレビ東京ミュージックに一回連絡してみようとか』と思っていただける機会が増えるといいなと思っています」(日下氏)と、プレイリストを窓口とした気づきや旧譜の掘り起こし、活性化を目指す。