【ハイパー四駆SUV 日本公道試乗:フェラーリ プロサングエ】「跳ね馬」であるために必要なものをなんら犠牲にすることはない
さながら「ロングノーズがひときわエレガントな」4ドアGT
スリーサイズは全長4973×全幅2028×全高1589mm。フロントミッドと呼べる位置にV12ユニットを収めるべくノーズはとても長くなっている。それに対して後方に寄せられたキャビンはコンパクトにまとめられ、ボリュームに満ちた艶めかしくすらある前後フェンダーとの対比で、グラマラスな体躯を描き出す。 目をひくのはフェラーリとしては高いが、ライバルと較べた時には格段に低い全高だ。改めてそのフォルムを眺めてみると、高さを稼いでいるのは主にフロントが22インチ、リアが23インチの大径タイヤ&ホイールと地上高だとわかる。純粋なボディシェイプだけで見ると、さながらロングノーズのエレガントな4ドアGTといった趣なのだ。 冒頭に迫力、存在感と書いたが、強面(こわもて)の顔つきで威圧してくるのではなく、流麗なフォルムや近年のフェラーリに共通する空気の流れを可視化したかのようなディテールのおかげで、プロサングエの佇まいには有り体に言えばオラオラ感は薄い。逆に言えば、それが故に孤高の雰囲気、気高さのようなものすら漂うのだ。 それこそライバルとなるSUVたちと並んだ時に、区別がつかないなんて微塵も思わせることはないはずである。 4枚のドアは、リアドアを後ヒンジかつ電動開閉式とした、いわゆる観音開き。さすがにセンターピラーレスではないが、ドアはフロントが63度、リアが79度まで開くため、乗降性は上々だ。 インテリアは左右をほぼ対称の意匠でまとめたデュアルコクピットデザインを採用する。左右独立の後席もやはりバケットシートとされており、頭上には十分な余裕が確保されている。つまり後席も補助席などではなく、4人が平等に捉えられているのである。
優れたハードウェアとともに、実用性にも配慮
ラゲッジスペースの容量は後席使用時でフェラーリ史上最大と言われる473L。とは言え、GTC4ルッソの450Lと数値上は大差ないのだが、段差のないフラットな空間は、格段に扱いやすくなっている。 しかも取り外し式の隔壁を外して、スイッチひとつで格納と展開ができる後席バックレストを前に倒せば、さらに広いスペースを確保することもできる。4人で長期の旅行は厳しいかもしれないが、1~2泊分の荷物なら積み込める。ふたり旅なら余裕だろう。 このボディはアルミニウムを主体に高強度スチールなどを組み合わせたもので、当然このクルマだけのために開発されたものだ。 ルーフパネルはCFRP製。中間層に防音素材を挟み込みながらも、アルミニウム製とするより2割も軽いと謳われている。 前ヒンジのボンネットフードを開けると、キャビン側に食い込まんばかりに後方に積まれているV型12気筒エンジンは排気量6.5Lの自然吸気で、最高出力725ps、最大トルク716Nmを発生する。そのアウトプットはエンジン前方に置かれたPTU(パワートランスファーユニット)により前輪に、そしてトランスアクスルレイアウトの8速DCTを介して後輪に伝達される。 そしてハードウエアの一番の目玉となるのが「フェラーリアクティブサスペンションテクノロジー(FAST)」だ。これは4輪それぞれの車高を、ダンパーに仕込まれた電気モーターによって個別に制御するもので、単に車高を調整できるだけでなくロールやピッチングといった姿勢のコントロールも可能とする。シャシはこれと減衰力可変システム、後輪操舵、E-デフ、ブレーキバイワイヤシステムなど、さまざまな機構が統合制御されているのである。
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