メルカリで返品詐欺? パーツ破損でキャンセルのはずが「ゴミ」に…出品者「安心して利用できない」
●その他にも考えられる罪は?
購入者は、キャンセル処理によって返品する義務を負った商品を返品せず、代わりに「ゴミ」を送りつけていることから、送った商品の横領罪(刑法252条1項、5年以下の懲役)が成立しうると考えられます。 横領罪は、詐欺罪よりも法定刑が軽いことから、上のように詐欺罪(1項詐欺)や詐欺利得罪(2項詐欺)が成立するのであれば、わざわざ横領罪の成立を検討する意味は薄いと思います。 しかし、上で説明した詐欺利得罪が成立する場合よりも、さらに犯行を決意するのが遅かった場合は問題です。 たとえば、パーツの欠品でキャンセル手続きをしたが、その段階でもきちんと返品しようと思っていて、返送する段階に至ってはじめてゴミを返品することを思いついた、という場合には、パーツの欠品があったという連絡等が「欺く行為」とはいえなくなり、詐欺利得罪も成立しない可能性があります。 このような場合でも、購入者が返すべき本来の商品を着服した点について、横領罪は成立すると考えられます。つまり、購入者が意図的に価値のない物を返却してきた場合には、いずれにせよ購入者は何らかの刑事責任を負う可能性が高いと考えられます。
●「まずはメルカリに対応依頼」ではあるが…
こういった問題が起こった場合、まずはメルカリに対応を依頼することになるでしょう。 ところが、先に書いたように、いわゆる返品詐欺に対し、メルカリ側がきちんと対応してくれない、という批判がXで噴出する事態となっています。 メルカリ側の事情を考えると、個人間の取引については証拠の保全が難しく、運営側としてもどちらが本当のことを言っているのかを判断するのが難しいため、あまり踏み込んだ対応を取りにくいとも考えられます。
●相手方のアカウントから、個人を特定できるか
今後もメルカリが取引トラブルについて対応しないという態度を維持する場合、当事者が直接交渉をする必要があります。 しかし、直接交渉しようにも、相手方の連絡先がわかりません。そして、メルカリはこの場合にも、相手方の情報を任意に開示しようとはしません。そこで、メルカリに対して法的な根拠に基づく開示請求をしていく必要が出てきます。 通常、こういった場合には情報開示請求という手続きがあり、手間さえいとわなければ、弁護士などに依頼せずに個人で行うこともできます。 しかし、メルカリを相手方とする場合には、個人で手続きを行うのが難しいのです。具体的には、弁護士会照会という手続きを踏まなければならないと思われます。<「取引デジタルプラットフォームを利用する消費者の利益の保護に関する法律(通称「取引DPF消費者保護法」)」5条参照>。 簡単にいうと、この条文は、個人間の取引について、相手方情報の開示を認めるような条文にはなっていないので、弁護士会照会という別の制度を使わなければならないのです。 そのため、弁護士に依頼しなければならず、費用もかかってしまいます。 したがって、トラブルが起こった場合に、相手方と直接交渉を行うこと自体が、かなり難しいかもしれません。