メルカリで返品詐欺? パーツ破損でキャンセルのはずが「ゴミ」に…出品者「安心して利用できない」
●投稿者「このままでは誰も安心してメルカリを利用できない」
投稿者は、結果的に補償を受けられたのですが、メルカリに対し、強い不信感を抱いています。また、自分が補償を受けられたからといって、問題が解決したとは考えていません。 投稿者は、弁護士ドットコムニュース編集部の取材に対し、以下のように話しています。 「今回、同じような被害に遭われている方々が、たくさん投稿をしてくださいました。私よりもっと酷いことをされた人もいっぱいいます。しかし、メルカリには無視されたり、ほとんどの人は満足のいく対応をしてもらえていません。被害に遭われている方の声を一人一人きちんと聞き、誠実な対応をして欲しいと思います」 「メルカリはなぜ被害者の声に全く耳を傾けなかったのか、事務局の体制や問い合わせへの対応はどのように行われていたのか、なぜ騒動が起きたから補償をするという態度に変えたのか、説明して頂きたいです」 「今後どういう対応をしていくのかも知りたいです。定型文ではなく、人がメールを読み、問い合わせ内容をよく読んでほしいです。このままでは誰も安心してメルカリを利用することができないと思います」
●法的問題は?
また、購入者にどういった犯罪が成立するのかを知りたいという声も多く目にしました。考え得るのは主に詐欺罪、窃盗罪、詐欺利得罪ですが、その他にも非常に検討すべき点があります。 以下で詳しく検討してみます。 (1)購入前からプラモデルのパーツ部分だけを抜き取る目的で購入の意思表示をした場合→1項詐欺罪が成立する 仮に購入者が返品詐欺を行った場合、犯罪の成立を検討するにあたっては、「購入者が、いつの時点で中身を抜いて返品しようと考えていたのか」が問題となります。 購入の申込みをする段階から、返品詐欺を考えていた場合には、売主(投稿者)に対する1項詐欺罪(刑法246条1項、10年以下の懲役)が成立すると考えられます。 (2)購入後に、プラモデルのパーツ部分を抜き取って返品しようと思いつき、抜き取って返品処理をした場合→1項詐欺罪は成立しない 難しいのは、購入者が購入後に、パーツ部分を抜き取って返品しようと思いつき、実際に抜き取って返品処理した場合です。 この場合、購入前から返品詐欺を考えていた場合とは異なり、購入者に対する1項詐欺罪は成立しないと考えられます。なぜなら、購入時点では購入者は売主を欺こうとしていない以上、同罪の成立に必要な「欺く行為」がないからです。 (3)窃盗罪(刑法235条) 次に、パーツを抜き取った段階で、パーツに対する窃盗罪(刑法235条、10年以下の懲役または50万円以下の罰金)が成立するとも思えます。しかし、パーツを抜き取った時点では、プラモデル全体の所有権がいったんは買主に移転していると考えられるため、窃盗罪の成立も難しいと考えられます。 (4)詐欺利得罪(「2項詐欺罪」ともいいます。刑法246条2項) では、あたかも最初からパーツが無かったように売主を欺き、財産的価値のないゴミを返品した点に、売主に対する詐欺利得罪(刑法246条2項、10年以下の懲役)が成立しないでしょうか。 検討の前提として、メルカリのシステムがどのようになっているのかが問題となります。 メルカリのウェブサイトによると、(1)購入者が返品を希望 (2)出品者が返品に同意 (3)出品者に商品を返送 (4)返送商品を確認後、キャンセル申請 (5)キャンセル申請に同意 (6)メルカリがキャンセル対応、という流れになります。 これによると、購入者が出品者に対して返品希望を申し出ることになっています。 この際に、送られてきた商品には何の問題もなかったのに、あたかも最初からパーツが欠品していたかのように購入者に対して嘘をつき、出品者が同意した後に、パーツを抜き取った後の商品(財産的価値がないいわばゴミ)を返品します。 これは、売主にパーツの欠品があったと誤信させて返品に応じさせたうえで、本来返品すべき商品の返還義務を免れていることとなるため、詐欺利得罪(246条2項)にあたると考えられます。 以上みてきたとおり、いつ返品詐欺を行おうと思ったのかで、成立する犯罪が246条1項なのか、246条2項なのか、というところが変わりはしますが、いずれにせよ詐欺罪(1項か2項)は成立すると考えられます。