【西海岸リビング&インテリア!】Aフレームの山小屋建築をモダンにリノベーション!
カリフォルニア州ロサンゼルス ビバリーヒルズ
ビバリーヒルズの奥に渓谷があることはあまり知られていない。ハリウッドの巨匠監督も家を所有している地に、古いキャビン風の邸宅を購入し、リモデルした建築家が住む。山小屋を愛した哲学者に触発された“心の聖域”を覗いてみよう。
採光窓と壁に収まる可動式ガラス窓で、明るいリビングルームに。ソファは〈B&Bイタリア〉で購入した、マリオ・ベリーニのデザインによる〈カマレオンダ〉。バルコニーの目隠しには米軍仕様カモフラージュネットを。
この人がオーナー!
アーシャ・マムーディ[Arshia Mahmoodi] 1969年イラン生まれ。5歳から米国で数年間暮らす。 イランの大学卒業後、1997年から米国カリフォルニア州LAに移住。 建築家歴7年。建築事務所〈アーシャ・アーキテクツ〉を経営している。
古い家の高い天井を再生し、過去と現代を融合した“聖域”!
ゲスト用ベッドルームは白の家具で統一。正面奥にはカスタムメイドのガラス製クローゼット、右手はバスルーム。
ビバリーヒルズの歴史はベネディクト渓谷からはじまったそう。山の保養地として開発され、狩猟小屋や山小屋などの名残りが見られるヨークム通りには、映画監督のジョージ・ルーカスやフランシス・フォード・コッポラなどが所有する小さめの家がずらり。イタリアの路地裏を思わせる風情がある。建築家アーシャ・マムーディが、この地を選んだ理由は「オークやカリフォルニア・ウォールナットやレッドウッド、シカやコヨーテなど多様な動植物が楽しめる。近隣の街とは異なる独自の微気候も魅力だから」。 1973年築の山小屋風の家を購入したのは2020年。山小屋で思索を深めた哲学者マルティン・ハイデガーに触発され、スイスの典型的なキャビンに憧れていたとか。リモデルのコンセプトは、過去からの重みを持つ構造に現代性を吹き込むこと。昔ながらの屋根や天井の特徴を残しつつ、空間の流れや繋がりをもとに複数あった部屋をひとつに変えた。 インテリアは「モノを増やさないミニマリズム」がモットー。家具はデザイン性に優れたものを厳選する。「透明感は“今この瞬間を生きる”というマインドフルネスを強化する」と自作した、ガラス製クローゼットも印象的だ。あなたにとって家とは? と問うと「単なる物理的シェルターではなく、心の聖域。ハイデガーのいう精神的な能力を養い、若返らせるために捧げられた空間」。建築家に宿る“哲学者の魂”が垣間見えた。