沢田研二ほど努力を欠かさない男はいない 78歳で初アルバムリリースの瞳みのるが感じたジュリーとは
ーー『秋望』もきわめて詩的な表現手法の曲ですが、「ガザ」や「ウクライナ」といった言葉が出てきてドキッとします 「國破れて 山河在り」……唐の詩人・杜甫が歌った『春望』を参考にしました。タイガースは1968年に『ヒューマン・ルネッサンス』という反戦歌を主体としたアルバムをリリースしています。当時はベトナム戦争の影響で、若者たちが平和についてとても真剣に考え、議論した時代でした。50年以上が経ち、世界が変わらず戦火につつまれているというのはとても悲しいことです。かつて反戦を叫んだ世代としてなにか発信しなければいけないと思い、作りました。 ■死ぬまで、言うべきことは言い続けたい ーー貴重な発信だと思います。これだけ危機的な状況でも昔のような反戦の声はなかなか聞こえてきません 同世代ではさまざまなミュージシャンや論客がいたはずなんですけどね。彼らにとって反戦はもうリアルではなくなってしまったのかもしれない。でも僕は死ぬまで、言うべきことは言い続けたいと思います。ザ・フォーク・クルセダーズの北山修さんとか今どんなことを思ってるんだろう? なかなか機会がないけど、久しぶりに会ってみたいですね。 ーー3月に「EXシアター六本木」(東京都港区)で開催したライブ「瞳みのる&二十二世紀バンド LIVE2023-2024! 結成10周年」のDVDが発売されました。二十二世紀バンドとの演奏はもちろん沢田さんや森本タローさんと一緒に歌う姿も収められ、大反響のようです 当初は配信だけのつもりだったのですが、思った以上に反響がありDVD化しました。そうと決まっていたらもっと歌詞を間違えないように気をつけたんだけどな(笑)。でも、10年続けてきた二十二世紀バンドや、その結成を助けてくれた沢田やタローと一緒にやれた思い出が形にできたことはうれしいですね。
ーー最近、タイガースのみなさんとはいかがですか たまに集まって食事するくらいですが、9月25日に「昭和女子大学 人見記念講堂」(東京都世田谷区)であった沢田のライブは、タロー、岸部一徳と観にいきましたよ。以前、沢田のライブを「歌詞間違い連発」とかたたいているネットニュースを見たけど、歌詞カードを見ずにあれだけ歌えたらすごいもんです。いつも会って話すのは京都時代の思い出話ばかりですが、衰えない声量といい、パフォーマンスといい、彼ほど前向きに努力を欠かさない男はいない。ステージにかける並々ならぬ情熱があるんでしょうね。 ーー現在78歳。実感はいかがでしょうか テレビを見ていても面白くないし、若者のボキャブラリーのなさが気になるだけ。年取っちゃったってことなんですかね(笑)。体調面でも今年に入って肺炎、胸や背中の打撲、腰椎骨折、白内障の手術とトラブル続きでした。これだけ病院に通ったのは初めてです。でも年齢によって体の不調が起こるのは仕方のないこと。幸い気力だけは若いころからまったく衰えていないので、眼鏡をかけても杖をついてでもステージに上がってやりますよ(笑)。 ◇ ◇ プライベートでは2015年に再婚。19年、72歳のときに授かった男の子は今は5歳に。以前なら瞳さんがドラムの練習をしていると興味をもって一緒にたたいたりしたものの、最近はiPadでゲームざんまいとのこと。お子さんに構ってもらえないことに少々寂しそうな様子だったが、これから年末にかけトークショーにライブにと忙しい。フラストレーションを情熱に変え、今後もさらなる表現の新境地を開いていただきたいものだ。 ひとみ・みのる/1946年9月22日、京都生まれ。1967~71年までザ・タイガースのドラマーとして在籍。グループ解散後、芸能界から引退。解散直後に高校(京都府立山城高等学校)に復学し、1年間の猛勉強で慶応義塾大学文学部に合格。文学部中国文学科を卒業後、修士課程を経て慶応義塾高校で教壇に立つ。2011年に芸能界へ復帰し、ザ・タイガースのメンバーとも積極的に競演する。24年9月21日、初のフルアルバム「おもい・いくさ・さとやま」をリリース。公式ホームページ:https://www.hitomiminoru.com/
中将タカノリ