ベルルッティやラルフ ローレンがデザイン!──ファッションで楽しむ「パリ2024オリンピック・パラリンピック」
約一ヶ月後に開催が迫ったパリ2024オリンピック・パラリンピック。選手たちのパフォーマンスとともにファッションブランドが手掛けるファッショナブルかつ機能的な衣装やユニフォームも見どころのひとつだ。フランスチーム、アメリカチーム、イタリアチーム、スウェーデンチームのセレモニー衣装やユニフォームをピックアップした。 【写真を見る】ベルルッティ×フランス、ユニクロ×スウェーデン、EA7 エンポリオ アルマーニ×イタリアのユニフォームをチェック
チームフランスはベルルッティ
■トリコロールをパティーヌで表現したディテールに注目! 「パリ2024オリンピック・パラリンピック」の開催国として、サステナブルな都市開発が進むフランス。自国での開催は1900年と1924年に続き、今年が3回目となる。この記念すべき2024年大会、フランスのアスリートとコーチを衣装でサポートするのが老舗ラグジュアリーメゾンのベルルッティだ。キーワードは、“エレガンス”と“コンフォート”。フランスの選手たちがスタートラインから印象に残るようなデザインを開発し、プロポーションへの挑戦に取り組んだ。 開会式などのセレモニーで着用するのは、ミッドナイトブルーのタキシード風のジャケットとパンツもしくはスカート。カラーリングが印象的なショールカラーは、フランスの国旗からインスパイアされたブルー、白、赤が見事なグラデーションを描いており、ベルルッティの伝統技術、パティーヌを想起させる。 ディレクションを手掛けたのはフランス版『VOGUE』の元編集長、カリーヌ・ロワトフェルド。「オリンピックという歴史的なイベントにふさわしい衣装には、快適性とエレガンスの融合が必要だと考えました。そこでエレガントなミッドナイトブルーのタキシード風ジャケットに、『ベルルッティ』を象徴するパティーヌの染色技術を模したショールカラーを合わせたんです」(ロワトフェルド) 女性用のジャケットをノースリーブで仕立てたのもスタイリッシュで、ボトムスはパンツもしくはシルクのラップスカートを選ぶことができる。インナーのシャツはコットンとシルクの混紡で作られておりこちらも女性はノースリーブ。フランス流の真のエレガンスを体現すべく熟練した職人たちが、あらゆる体型の選手にフィットするようにと、計1500着以上を作り上げた。 ■職人が手作業で仕上げたアルティザナルな衣装 メゾンを象徴するパティーヌは、ベルルッティ独自の素材であるヴェネチアレザーに、職人が筆を使って手作業で何層にも色を塗り重ねることで、独特のグラデーションを生み出す技法だ。今回のショールカラーのグラデーションはそのパティーヌのニュアンスをプリントで表現しており、幅広いサイズで製作する必要があったため、プリントもサイズごとに最適なバランスになるよう調整がなされている。さらにベルトにもパティーヌの技法が用いられ、タキシードとリンクするようナショナルカラーがハンドペイントされている。 シューズはベルルッティの「ロレンツォ」をベースに、ネイビーのパティーヌで仕上げた。女性用のみならずさまざまな競技のアスリートのために、サイズは1~22までがラインナップする。既存の製品で展開されるレンジを大幅に上回るサイズを製作する必要があり、その点も大きなチャレンジであったという。 スニーカー「シャドウ」は、ニットのアッパーとラバーのアウトソールという仕様で、極めて軽量で快適な履き心地を実現。オールネイビーのボディに黒いシューレースを合わせているので、シュータンとヒールにあしらわれたグラデーションのトリコロールカラーが際立つ作りになっている。 ベルルッティ CEOのジャン=マルク・マンスフェルトは本プロジェクトについて、次のように語っている。「ベルルッティは、パリ2024 オリンピックおよびパラリンピック競技大会の開会式でフランスチームのスタイリングを担当するという特別な機会を得たこと、また選手はじめ、プロジェクトチームとのクリエイティブなコラボレーションに大変満足しています。この衣装で、私たちはフランスのエレガンスを称え、アスリートとコーチに貢献することを目指しました」。メゾンの伝統と優雅さを再解釈し、新たなスタイルで誕生したトリコロールカラーが、開会式にモダンな華やかさを加えるだろう。 「チームUSAはラルフ ローレン」 ■デニムを合わせた古き良きアメリカンスタイル チームUSAが開会式と閉会式に纏うのは、ラルフ ローレンが手掛けたアイテム。デニムやブレザーでクラッシックなアメリカンスタイルを表現した。 活気に満ちたパリの雰囲気と、オリンピック・パラリンピックの伝統に敬意を評したデザインで、アメリカの国旗からピックアップした赤、白、青のシグネチャーカラーを取り入れ愛国心を表現。開会式のユニフォームは、アメリカントラッドの世界観で、赤と白のパイピングが施されたウールブレザーにストライプのオックスフォードシャツを合わせ、ボトムスには、ライトカラーのデニムとスエードシューズをコーディネートしている。 閉会式のユニフォームは白をベースにし、スタンドカラーブルゾンにホワイトデニムを合わせた。インナーのポロシャツはブランドのカスタムプログラムである「クリエイト・ユア・オウン」を用い、余分な生地を最小限に抑えることを目的とした革新的なフラットニット技術で作られている。 ■リサイクル素材を用いたサステナブルなコレクション ラルフローレンではサステナブルな素材の開発にも力を入れており、チームUSAの開会式と閉会式パレードのユニフォームを含むオリンピック コレクション全体には、リサイクルポリエステルやアメリカ産のレスポンシブル ウール スタンダード (RWS)認証のウールなどを使用した。これらラルフ ローレンによるチームUSAのための開会式と閉会式の衣装や、チームUSAのアパレルとアクセサリーのコレクションは、残念ながら日本での販売はないが、RalphLauren.com、TeamUSAShop.com、米国とフランスの店舗で販売されており、ポロシャツやヴィンテージスタイルのラグビーシャツ、アメリカ国旗が描かれたニットなど、エネルギッシュなグラフィックや大胆なカラーブロッキングで、チームを鼓舞するコレクションとなっている。 「チームスウェーデンはユニクロ」 ■実験に基づき緻密に計算されたLifeWear スウェーデンがタッグを組むのはユニクロだ。ユニクロが掲げる高品質で長く着られるLifeWearの価値観は、シンプルで美しいデザインや現代的なライフスタイルを尊ぶスウェーデンの文化にもリンクする。両者は、「品質」、「革新性」、「持続可能性」、といった3つの価値観を共有し、世界的スポーツ大会に出場する選手団のためのウェアの共同開発のほか、若い世代や子供たちのための次世代育成活動として「ユニクロドリームプロジェクト」をアスリートとともに推進している。 パリ2024オリンピック・パラリンピックでは、“The High-Performance Simplicity of LifeWear”をコンセプトに、機能美と洗練されたデザインを両立した新たなコレクションを開発。アスリートの声をもとに、競技時だけでなく選手たちが日常でも快適に着られるLifeWearとして、過去大会で提供したウェアの素材とフィッティングを改良した。ユニクロが手掛ける競技ウェアは、8つのオリンピック競技種目(ゴルフ、卓球、カヌー、セーリング、射撃、スケートボード、水泳、ビーチバレーボール)と、5つのパラリンピック競技種目(卓球、水泳、ボート、射撃、ボッチャ)だ。 ■実証データに基づくデザイン開発 本コレクションは様々な検証を経て開発された。特にユニクロ有明本部の人工気象室では、暑さ指数など天候データの分析を行うために、パリの温度湿度を再現した環境でモニターテストを実施。運動時の発汗ポイントと量の検証を行い、ウェアにおける通気孔の配置やフィッティングの改良に一石を投じた。また、動きを妨げず体に適度にフィットするシルエットを追求するために、パンツ丈やシャツの身丈、首周りの立ち襟の長さなど細かくミリ単位で調整を施し、フィット性を高めている。今回はパリでの大会ということで、美しい街中に溶け込むよう、都会的で落ち着いた雰囲気のデザインやカラー使いにもこだわり抜いた。スニーカーは専門の研究機関の協力を得て、足にかかる負担を最大限に減らすためのリサーチと改良を重ね開発に挑んでいる。 素材においては、ユニクロの店舗で回収した商品(ポリエステル高混率素材)の一部を、化学的にリサイクルし、ケミカルリサイクル素材として選手団が着用するスウェットやTシャツなど公式ウェアの16アイテムに採用した。 開閉会式やメダルセレモニーで着用する「プレゼンテーション3Dニットジャケット」は、1本の糸を立体的に縫い目なく編み上げることを可能にしたホールガーメント®技術によって、美しいシルエットと動きやすさを実現。通気性を高めたニット編みによって、汗の蒸れや熱を外に逃がしやすく快適さをキープする。また、アスリートがストレスなく着られるよう、ポケットをあえてつけないことでより軽くスタイリッシュなシルエットに仕上げた。これは選手たちのフィードバックを反映したものだ。ファスナーの引き手は、指を通して上げ下げしやすいユニバーサルデザインを採用している。 また、セーリング競技は海上で行われるため、シャツには、汗をすばやく乾かしサラリとした肌触りが快適な「エアリズム」の素材を使用している。卓球のユニフォームは、スウェーデン国旗のカラーリングをベースに、落ち着いたトーンの青色と黄色の2種を提供した。ドライEXの吸汗速乾機能と抗菌防臭機能がついたシャツは、汗をかきやすい部分に通気性の良いメッシュ構造を配置し、競技時も快適な着心地を実現。ショートパンツやスコートは、縦にも横にも自在に伸びるウルトラストレッチ素材と、速乾性に優れたドライ機能を使用している。 スウェーデンのトップアスリートとの協業によって誕生した「UNIQLO×SWEDEN ATHLETE COLLECTION」は、LifeWearの哲学のひとつ、“Less is more”を体現。極めてシンプルなデザインでありながらも、スポーツから街歩きまであらゆるシーンで日常を豊かにしてくれるコレクションだ。これらはオンラインストアとユニクロ一部店舗で購入が可能。 スウェーデンオリンピック・パラリンピックチームとユニクロとのメインパートナー兼オフィシャル・クロージング・パートナーシップは、2026年に行われる冬季五輪であるミラノ・コルティナダンペッツォ大会まで継続する。 「チームイタリアはアルマーニ」 ■スポーツを愛する人々のために敬意を込めて 2024年春夏メンズコレクションで「パリ2024オリンピック・パラリンピックック」チームイタリア代表選手団のオフィシャルウェアの一部を発表した、EA7 エンポリオ アルマーニ 。お披露目されたのは、イタリアの三色旗であるトリコローレが襟元にプリントされたポロシャツやTシャツなど。ポディウムトラックスーツには、サテンのパッチで作られた「W Italia」の文字がコントラストを効かせたステッチで大きくあしらわれている。ほかにも、イタリア国歌の第1節の全文が内側にプリントされたジャケットも登場する予定だ。そのほかトロリーバッグやバックパック、キャップ、スニーカーもラインナップする。 会場では様々な種目のオリンピック選手とパラリンピック選手がこの世界的スポーツイベントのために特別に制作されたウェアを纏い、アルマーニ/テアトロのキャットウォークを闊歩した。フィナーレではデザインを手掛けたアルマーニ氏が登場し、イタリアの選手たちとともに勝利を願い、会場はさらなる熱気に包まれた。 ■開会式の衣装にも期待! ジョルジオ・アルマーニは同プロジェクトについて、「エレガンスと実用性を融合させなければならないアスリートウェアの可能性を探求することは、私にとって常にエキサイティングな挑戦です。チームイタリアのために、機能的でありながらスタイリッシュなウェアを制作し、アスリートのモチベーションを高め、強い帰属意識を育むようにデザインしました」とコメントした。また、オリンピック開会式および、パラリンピック開会式にてイタリア選手が着用するオフィシャル衣装もジョルジオ アルマーニがデザインを手掛ける。 アルマーニとイタリア代表とのコラボレーションは2012年のロンドン大会からはじまり、2014年ソチ、2016年リオ、2018年平昌、2020年登場、2022年北京、そして2024年のパリ大会に続き2026年ミラノコルティナ冬季オリンピック・パラリンピックまで継続することが決定している。 いよいよ約一ヶ月後に迫った「パリ2024オリンピック・パラリンピック」。競技を楽しみながら、大会を華やかに彩るユニフォームを通して各国の文化とクリエイションにも目を向けてみよう。
文・尾竹めぐみ、編集・遠藤加奈(GQ)