「メカウデ」豊永利行&杉田智和が生んだ掛け合いの妙 キャラクターへの向き合い方を語る
TVアニメ「メカウデ」がTOKYO MXほかにて放送されている。同作は、当時の福岡の学生等の有志が集まったクリエーター集団・TriFが企画を立ち上げ、クラウドファンディングで資金を調達し、2018年に満を持してパイロット版が公開。世界中から反響を集め、この度テレビアニメ化が決定した。 【写真を見る】左から、豊永利行、杉田智和 ごく普通の生活を送っていた男子中学生のヒカルが、謎の"ウデ"型機械生命体・アルマと出会ったことから、メカウデ使いたちが繰り広げる大事件に巻き込まれていくーー。 今回はヒカル役の豊永利行と、その相棒のアルマ役の杉田智和にインタビューを行い、テレビアニメ化の感慨や役作りで意識したこと、作品の魅力を語ってもらった。 ――「メカウデ」は構想から約10年の月日をかけて制作されました。改めてTVアニメ化が決まった時の気持ちを教えてください 豊永「パイロット版に参加させていただいた時は、あらかじめクラウドファンディングで資金が集まらなければアニメ化ができない状態というのを聞いていたので、実際にパイロット版の制作が決まって純粋に良かったですし、TVシリーズもパイロット版からキャストが継続されたので嬉しかったですね。あとは、パイロット版は物語がギュッと凝縮されていたので、ストーリーが膨らんでいった時に不明瞭だった部分や謎だった部分がどう明かされていくのかすごく楽しみにしていました」 杉田「足掛け10年で夢が実現し、次の10年に歩もうとするタイミングで、『メカウデ』にアルマとして関われて嬉しいです。最初にクラウドファンディングを実施すると聞いた時は、自分が出演するにあたってどこに気持ちを置けばいいのかという迷いがありました。当然、うまくいってほしいことは確かですが、クラウドファンディングにありがちな、数字ばかりが話題になってしまう展開は結構しんどいので(笑)」 ――完成された映像についてはいかがですか? 豊永「個人的にはカット割りの演出や会話のテンポがいい意味で早いので、いわゆるドラマチックな見せ方みたいなものを、すごくリアルに落とし込んでいるというか。オカモト監督のこの作品に込めた思いや熱量とフラットに届けたいという2つの思いが融合されてる作品なのかなと感じました。そこがすごく挑戦的ですよね」 ――すごくテンポ感のある会話劇が展開されていますが、お2人がキャラクターを演じる上で意識されたことはありますか? 杉田「アルマとして演じる上で当初、『現代の子どもに対して相棒としてどう接するか』をテーマに役作りをしていたんですが、実はアルマ自身も子どもだったことに気づいたんです。記憶がない、自分自身が分からない、不安を吐露できないとなると、自分と似たような境遇のヤツにすがりつくしかない。出会ったのがヒカルで良かったですよね。イベントでも言いましたが、もし極悪人の元にアルマがいたとしたら、時限爆弾に改造されて粉みじんになってしまったり、間違った情報ばっかり植えつけられて、人類をジェノサイドする兵器になったりしたかもしれない(笑)」 豊永「ヒカルは平凡な中学生の男の子なのですが、今の中学生の子がどんな子なのかは僕らはあくまで想像しかすることしかできないので、僕の中での中学生時代の情報と照らし合わせつつ、現代のテクノロジーだったりとか、そういうものの進歩によって変化している部分は取り入れて演じました。ただ、個人的には根っこの部分はどの世代でも一緒だと思うんですよ。なので、僕らの時代にもいたような、平凡な中学生の男が今の時代にもいるという認識のもとで、良くも悪くも協調性がある子がヒカルくんなんだろうなと想像しつつ、その感覚をどう表現に落とし込んでいこうかなというのは意識していました。ツッコミやリアクション1つ取っても、変にアニメアニメしすぎて、整合性が取れなくならないようにしたくないと思っていたので、あくまでもリアルな質感を意識することを心がけました」 杉田「ヒカルが抱えている不安や恐れを共有することで、2人の間に共通項が生まれて、バディとして絆が深まっていく。ただ、根本の問題が解決しないと危機的状況からは脱することができないので、そこは相手を信じる。相手が望まないものを提示してしまうと、何もしないのと一緒だと思われてしまうから。言葉を隠さないで言うと、メンヘラの彼女と付き合う時、常に見えない選択肢が時限爆弾のように襲ってくるイメージ」 豊永「そこは言葉隠していただきたくて......(笑)」 杉田「過去に遊んできたゲームの話ね」 豊永「それなら良かったです(笑)」 杉田「命の危機が訪れる中、どれだけ自分の相棒を信じられるか、『そもそも信じるってなんだろう』ということを常に念頭に置きながら演じました。アルマは後で声を加工しなければいけないので、本番は別の部屋での収録になることもあるんです。ただ、テストの際は同じ部屋でイメージの共有ができるので、なるべく豊永くんとは収録日が一緒なら嬉しいなと思っていました。幸い、ほとんど一緒の時間で収録できたのでよかったよね」 豊永「僕も杉田さんと一緒に録りたいなと思っていたのでありがたかったです」 ――最後にお2人が考える作品の魅力を教えてください 杉田「数ある娯楽の選択肢の中で、『メカウデ』を選んで観ていただけたことにまずは感謝したいですね。どういった層の方が『メカウデ』を観ているのかがすごく気になっています」 豊永「ヒカルとアルマの関係性は切っても切り離せない関係性なのですが、やっぱり出会い方が出会い方なので、アルマが何者か分からないというところに関して言うと、やっぱりすごく脆弱な関係性なんですよね。ヒカルが関係を断ち切りたいと言って、パーカーを脱いで置いていってしまったら、もうそれまでなので(笑)。そこにヒカル自身の優しさだったりとか、何かを放っておけないその気持ちの葛藤が見えてくるのでぜひ注目してほしいです」 取材・文=川崎龍也 撮影=MISUMI
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