勝てないサンウルブズの山田が最多トライの不思議?!
スーパーラグビーへ初参戦している日本のサンウルブズが茨の道を歩んでいる。2016年2月初旬の初顔合わせから約4週間で開幕を迎え、第12節終了までに10戦をおこない、1勝8敗1分け。早くも負け越しが決まっている。もっとも、その一員たる山田章仁は、現在リーグ最多の8トライをマークしている。 長丁場のリーグ戦における得点関連のタイトルは、攻撃機会の多い上位陣から生まれやすい。1か月間の休みを挟んで約3か月半も続くスーパーラグビーのレギュラーシーズンでも、それは然り。2013年度に9位だったブルーズのフランク・ハライを除けば、過去5シーズンのトライ王は、リーグ戦で5位以内だったチームから生まれている。苦しむチームにおいて山田のトライ量産は異例だ。 昨秋のW杯イングランド大会の日本代表ウイングとして歴史的な3勝を挙げた山田は、今季、海外からのオファーを蹴ってサンウルブズへ参画した30歳。クラブ初勝利となったジャガーズ戦など2試合を怪我で欠場しており、1試合の平均トライ数は0.8としている。グラウンドに出ればかなりの高確率でフィニッシュを決めているのだ。 3月12日の第3節では、準ホームのシンガポール・ナショナルスタジアムでチーターズからスーパーラグビー自身初を含む3トライを奪った。初の亜熱帯地域でのゲームに後半はガス欠となるも、31―32と食らいついていた。さらに5月14日、またもシンガポールでおこなわれた第12節では、加盟する南アフリカカンファレンス1で首位のストーマーズと激突。17-17と引き分けに持ち込んでいた。この日は、前半11分、ランキングトップに躍り出る8トライ目を刻んでいる。 山田はなぜ、厳しいシーズンを送るチームでトライを取っているのか。その解は、チームの背景と個人の背景から浮かび上がる。 まず、チームの背景から。 W杯イングランド大会の日本代表10名が軸となったサンウルブズは、自軍ボールの継続に力を注いできた。コーチ陣の提示したフレームワークを、ストラテジーリーダーとなった数選手がかみ砕き、チーム全体に染み込ませている。2013、14年シーズンはレベルズに入ってスーパーラグビーを経験した堀江主将も、かねてサンウルブズの強みを「皆が戦術を理解しているところ」と発言している。サンウルブズは開幕後も、試合を重ねるごとに個々の立ち位置やシェイプ(攻撃陣形)を微調整する。総体的に自軍ボールを保持できた割合を示す「ボールポゼッション」の値は、1試合平均で55.4パーセントとしている。 4月16日に行われたチーターズ戦も17-92と大敗したが、49パーセントの「ボールポゼッション」を保った。負けたゲームでも、一度掴んだ球をなかなか離さなかった。