勝てないサンウルブズの山田が最多トライの不思議?!
サンウルブズ苦戦の主たる理由は、選手間の呼吸が肝要なスクラムやラインアウト、控え選手が出た際の攻守の切り替えの遅れ、根本的な身体の強度など、本来は長い時間をかけて向上させる類のものばかりだ。いずれも、組閣までの不揃いな足並みや準備期間の短さが引き起こしたものとも取れる。苦しい戦いが続くなか、田邉淳アシスタントコーチが「それをする(エリアを問わずにボールキープをし続ける)ほどのフィットネスはない」と分析。自陣ではキックでリスクを減らすようマイナーチェンジを図った。 それでも、選手の側からは「継続すれば(トライが)取れる」との声が多い。我慢して手数の多い攻めを貫くという基本方針は、いまだに貫かれていよう。エースのトライチャンスが増えやすい風土が、ある程度は整っているのだ。 3月のチーターズ戦の前半13分に生まれた山田のトライは、グラウンド中盤左から右大外へのキックパスが起点だった。捕球したフルバックのリアン・フィルヨーン、その左脇にいたセンターの田村優を経由し、右タッチライン際の山田がラストパスを受け取った。そのまま駆け抜けた。 決めた本人は「そこのスペースが空いているとわかっていた」と言った。 逆サイドの背後ががら空きになるという相手防御の傾向をチームで分析し、キックパスで急所を突く旨を打ち合わせていた。それが、自分のスコアと化したのだという。 サンウルブズの組織性が、エースのチャンスを創出している。 一方、そのチャンスに気づき、結果を出せるかどうかは、そのエースの資質次第である。ここで着目されるのが、山田の個人の背景だ。サンウルブズには他選手より約1週間遅れて合流した山田だったが、「そのチームの戦略とかはすぐに理解できる方なので」。攻撃の練習では、初めてともにプレーする仲間の特徴や癖を知った。 例えば、フィルヨーンがタックルされながらでもバックフリップパスを出せる選手だと知ってからは、近寄り過ぎずにスペースの手前でチャンスを待とうと思えた。味方の得意なパスの種類によってポジショニングを変える意識は、きっと知らずのうちに持ち合わせていただろう。