サイコ芸人が手に入れた「優しさ」 平成ノブシコブシ徳井健太の「褒め芸」
あくまでも自分の目からどう見えているかを伝えるだけ
もともと徳井は後輩芸人に気軽に声をかけて、励ましの言葉を送ったりすることがあった。自分自身が尊敬する先輩に言われた「あれは面白かったよ」といった言葉に勇気づけられて、芸人を続けてきた経験があったからだ。 「シソンヌに『面白いから辞めない方がいいよ』って言ったり、ニューヨークに『絶対いつか認められるときが来るから、今まで通りやっていた方がいい』って言ったことはあると思います。でも、向こうは覚えてないかもしれないですね。現にトレンディエンジェルのたかしは、僕が会うたびに『お前らは絶対にM-1優勝する』って言ってたのを全然覚えてなかったみたいです(笑)」 ネタの中身についてあれこれ細かくアドバイスをすることはない。ただ、普段は毒舌で面白いのに、ネタになったらいい人ぶってるような芸人に対しては「もっと自分らしくやった方がいいんじゃない?」などと言うことはある。あくまでも自分の目からどう見えているかを伝えるだけで、それを受け入れるかどうかは本人たちが判断すればいい。 「(霜降り明星の)せいやが折り紙を折れないっていう話とか、普通の社会だったら弱点とされるようなことを芸人だったら笑いにできるじゃないですか。いじめられてたこととか、コンプレックスだったものもプラスになって返ってくるっていうのが気持ち良すぎるっていうのはあります。単にかわいそうな話をするよりも、かわいそうで面白い話をした方が格好良いし、それができるのが芸人なのかなと思います」
「普通に面白い先輩」渡部の復帰を後輩芸人は怖がっているはず
コンプレックスも失敗も、すべてを笑いに変えられるのが芸人の強みだ。徳井の目には、スキャンダルで窮地に陥った芸人すら輝いて見える。 「(アンジャッシュの)渡部(建)さんだって普通に面白い先輩なので、『がんばってほしい』なんて全然思わないですね。本当に思ってないことも思ってるようにできるっていう能力がありますからね。相方の吉村(崇)とかはライバルになっちゃうんで、怖がってるんじゃないですか。後輩芸人からしたら、あの天才がついに帰ってきてしまった、みたいな感じだと思いますよ」 そんな徳井に自分自身を考察してほしいと水を向けると、すかさず「圧倒的に欲が足りないですよね」と答えが返ってきた。 「吉村はそれが一級品だったんで。とにかくウケたいとか売れたいっていう気持ちから放たれる光り輝く矢のような一撃が、ほかの人を超えていく瞬間があって。僕も大喜利っぽいこととかいろいろ試したりしましたけど、結局、吉村の『クソッ!』っていう一言に勝てないからあきらめました。僕に欲があるとすれば、自分の好きな芸人が売れてほしい、認められてほしい、っていうことぐらいですね」